伝統と創造シリーズvol.2「トリプル・ビル」

セルリアンタワー能楽堂 伝統と創造シリーズvol.2
〜ダンサーの息に手が届く〜「トリプル・ビル」

出演:イリア・ロウエン、津村禮次郎、酒井はな、横関雄一郎、中村誠、平原慎太郎、大前光市ほか
●レオ・ムジック『アレクサンドリア四重奏』
●ディヴィッド・ヘルナンデス『SKIM A』
●アレッシオ・シルベストリン『かけことば』

(2009年3月1日夜 セルリアンタワー能楽堂)

IMAバレエフェスティバル『くるみ割り人形』

IMAバレエフェスティバル『くるみ割り人形
主催:IMAホール
構成・振付:松崎すみ子
バレエミストレス:菊沢和子
金平糖の女王:奥田花純
王子・くるみ割り王子:黄凱
ドロッセルマイヤー:小原孝
コロンビーヌ:金子優
クラウン:小出顕太郎
(2009年3月1日昼 光が丘IMAホール)

練馬区は東京都内でも舞踊の盛んな地域のひとつといわれる。松崎すみ子はこの地域を代表する指導者・振付家バレエ団ピッコロを主宰し、多くのダンサーを育てつつ『マッチ売りの少女』『旅芸人』『ドラキュラ+赤い靴』『オンディーヌ』など日本バレエ史に残る創作を発表してきた。光が丘のショッピングモールに入っているIMAホールの主催・IMAバレエフェスティバルは回を重ね、松崎が中心となって『くるみ割り人形』を上演している。ジュニアや子役の出演者はオーディションにより決められるらしく、多くのスタジオから集う。会場は間口も奥行きも広くない中ホールながら逆に舞台と客席の距離が近いこともあって踊り手たちの息遣いや表情がよく伝わってくる。クララの家の客間のクリスマスツリーや白い布で山々をあらわした雪の国の背景など手づくり感があって微笑ましい。アットホームな雰囲気が何よりの特徴だろう。また、主役のみならずキャラクテールや脇役にも見せ場をつくり見応えのあるものにしている。コロンビーヌとクラウンが第二幕にも登場、キャンディケーキと花のワルツの間にデュオを踊り客席を盛り上げた。第一幕、クリスマスパーティが終わったあと、メイドやボーイ、乳母がホッと一息つき、ささやかに杯を交わす景など小さな芝居にも血が通っている。金平糖の奥田は下村由理恵門下の成長株。ベテランの黄に支えられ、安定した技術と若さに似合わぬ風格ある演技をみせた。コロンビーヌの金子はチャーミング。クラウンの小出も軽快に踊る。ドロッセルマイヤーの小原は橘秋子賞助演優秀賞も受賞した“名優”だ。優しげで人のいい雰囲気を醸しだしてクララをあたたかく見守っていた。地域の観客に訴求しつつ若い踊り手を舞台で育てる場は貴重。今後の展開も期待される。