『火の鳥』上演相次ぐ

火の鳥』は、ロシア民話に基づいてストラヴィンスキーが作曲しフォーキンが振付けた1幕2場のバレエ作品ですが、そう頻繁に上演される演目ではありません。しかし、今年はディアギレフのバレエ・リュス初演(1910年6月25日 パリ・オペラ座)から100年目にあたることもあってでしょう。わが国でも上演が相次ぐ珍しいケースになります。
ひとつは先日行われた東京小牧バレエ団による上演。1954年にノラ・ケイを迎えて日本初演した小牧正英の演出版(フォーキン版に拠る)を手塚治虫が観て、同題の大作マンガ・シリーズ創作を思い立ったというのはよく知られた挿話です。今回の上演は小牧版を受けて佐々保樹が改訂振付したものでした。佐々版は、原点版の良さは残しつつ悪党のカスチェイらの踊りに迫力を増すなど間延びせず飽かせないもの。そして、タイトル・ロールの酒井はなの妖艶で神々しいまでの圧倒的存在感が話題でした。
秋には、新国立劇場の2010/2011シーズンの幕開けとして、デヴィッド・ビントレー芸術監督就任オープニング公演のなかでビントレーの『ペンギン・カフェ』等とともに上演されるのはすでに話題になっています。フォーキン版で、火の鳥役は、小野絢子と川村真樹、外国人ゲストが交代で踊るようです。今日、古典と現代を結ぶ近代バレエの重要性が説かれますが、それを意識してのプログラミングでしょう。また、東京シティ・バレエ団が東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と共演する「オーケストラwithバレエ」でも『火の鳥』を取り上げるとか。例年、指揮:飯森泰次郎、振付:石井清子というコンビが手がけている企画ですが、今年もどういう舞台になるのか楽しみなところ。
初演で火の鳥を踊ったのはニジンスキーとの共演で知られるカルサヴィナ。いわずと知れた伝説の名花です。以下は、マリインスキー・バレエのディアナ・ヴィシニョーワの踊る『火の鳥』。10代のころにローザンヌ国際バレエコンクールで踊った『カルメン』で話題になりましたが、大人びた表現にかけては当代随一とされるプリマの真骨頂でしょう。