「踊りに行くぜ!!」vol.8 in 静岡

JCDN主催「踊りに行くぜ!!」は今年で8回目、全国24都市で41作品が上演されている。そのうち静岡公演を観ることができた。静岡では2005年からストリートフェスティバル・イン・シズオカ実行委員会が音頭を取り「踊りに行くぜ!!」を開催。街全体、ストリートからのアートの発信を試みる活動として注目される。市内中心部に位置する青葉シンボルストリートから屋外会場へと数箇所をめぐるダンス鑑賞体験は快いものとなった。
最初の作品は、山口佳子(岡山)『おざぶぅ』。路上に6畳の畳を敷き、その真ん中には1枚の座布団。ほとんどそのなかで山口のソロパフォーマンスが行われる。爪先で立ったり、座って座布団の渕を指でなぞったりと細かな所作を積みあげていく。跪いたまま座布団を両手で掴み跳び跳ねるなどの動きもある。コピーは「ざぶとんひと間、わたしの時間」。導入から展開もまずまずで一応最後まで飽きさせなかった。
続いてもストリート上でのパフォーマンス。ストリートといえば、なんといってもAbe“M”ARIA(東京)である。新宿の歩行者天国でのライブ等も行っている筋金入りのパンキッシュな踊り手だ。今回の『 ―― 』でも彼女の暴走は止まらない。コンテなのかストリート系なのか舞踏なのかジャンル不明の無国籍ともいえる独特のエネルギッシュな動きで凶暴に踊る。露店の柱に寄りかかったり、幼児に絡んだりと客イジリも楽しい。
3つ目の作品も野外で踊られた。村上和司(兵庫)『RED MAN 2007』は、ショウマンシップ満載の快作とはいえる。全身赤で黒のサングラス姿、次々に服を脱ぎ捨てていくが、脱いでも脱いでも金太郎飴のようにまたシャツが・・・。やがてはブリーフとブラジャー(!)だけの姿に。「白鳥の湖」や「黒猫のタンゴ」などを用いた音楽構成も親しみ易く会場の反応もよかったが、村上の旺盛なサービス精神の裏側には、踊り観客と触れ合うことでしか充たされない弧愁なりがあるのかも、と終わったあとフト思った。
個々からは市役所のロビーに設えられた会場での上演である。赤丸急上昇(松山)『日々是好日』は赤松美智代、丸山陽子のデュオ。自称「みかんの国からやって来たコンテンポラリー芸人」らしい。ひとりは大きな坊主風の被り物を来て自転車にのり、もうひとりは頭からもズボンも履いている。両者がいろいろ絡み、笑いを狙っているのだろうがクスリともできない。動きもややタルい。「マンガみたいなダンスを身体を使い切って踊る肉体派」を標榜しているらしいが・・・。
トリは御大・山崎広太『いるか』(東京)。彼の振付作品やソロは結構観てきたが、この作品はちょっと軽い。「これから舞踏を踊りま〜す」といってそれらしい動きで笑いを取ったりするは何とも・・・。天下のベッシー賞受賞者のラフな踊りがみられたと思えば木戸銭は惜しくない(カンパ制でした!)というと嫌味な言い方だろうか。が、彼特有の吸い付くようで滑らかな、微妙繊細な足裏捌きを間近で見るとやはりさすがだと唸らされた。
(2007年11月24日 静岡市葵区青葉シンボルロード)