谷桃子バレエ団『白鳥の湖』

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業)
谷桃子バレエ団創立60周年記念公演1『白鳥の湖』(全幕)
芸術監督・再演出・再振付:谷桃子
オデット/オディール:緒方麻衣
ジークフリート王子:三木雄馬
ロットバルト:近藤徹志
指揮:福田一雄 演奏:東京ニューシティ管弦楽団
(2009年1月24日昼 新国立劇場中劇場)

不世出のプリマ、谷桃子は先日めでたく米寿を迎えた。主宰する谷桃子バレエ団もちょうど今年で創立60周年にあたり、2年にわたってカンパニーの代表的なレパートリーを上演する記念シリーズが行われる。その第1弾は『白鳥の湖』全幕。『ジゼル』とともに谷の代名詞ともいえる作品であり、かっては東横ホール等で新春に『白鳥の湖』を上演、オールドファンには年初めの風物詩となっていたというのは有名な話である。
谷版はプティパ/イワノフ版を基本にオディールと王子の死によって至上の愛が結実する幕切れとなっている。ポーズを美しく映えさせる点に振付の特徴があろう。2日間3キャストのうち若手のホープ緒方麻衣&三木雄馬の主演の回を観ることができた。緒方はのびやかで丁寧な踊りと表情豊かな演技に定評がある。オデットでは堅実ながらも淡白な演技に陥ることなく叙情を表現していた。出色がオディールの演技。ヴァリエーション自体の完成度はより高めてほしいけれども、王子を誘惑する視線や仕草がなんとも色っぽく、かつ奔放で、愛の駆け引きを愉しむかのような余裕すら感じさせる。三木雄馬もヴァリエーションにおいてスケールのある踊りを披露し見せ場を創った。
若手の抜擢は時期、タイミングを考え慎重に行わなければならないが、このところ谷バレエ団では攻めの姿勢が感じられる。幅広い世代の個性的なダンサーを多く擁しているのも強みであろう。初夏のクルベリ作品、秋の『ジゼル』と次なる展開が楽しみだ。