アントニオ・ガデス舞踊団『アンダルシアの嵐』

アントニオ・ガデス舞踊団『アンダルシアの嵐』
振付・監督:アントニオ・ガデス
ラウレンシア:クリスティーナ・カルネーロ
フロンドーソ:アンヘルヒル
村長:アドリアンガリ
騎士隊長:ホアキン:ムレーロ
(2009年3月3日 文京シビックホール大ホール)

現代フラメンコの巨匠、アントニオ・ガデスが逝去したのは2004年のこと。その報は日本でも大きく報じられた。1980年代に自身の舞踊団を率いて来日、空前のフラメンコブームを巻き起こした立役者である。名匠カルロス・サウラ監督との協同作業による「血の婚礼」「カルメン」といった映画でも広く知られよう。ジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」(ベジャール振付)が印象的な映画「愛と哀しみのボレロ」やベジャール・バレエの来日公演に接してバレエに開眼したファンは多いけれども、同様に同時期にガデスの出演する舞台や映画を観てフラメンコに惹かれた日本の観客も少なくない。現在の新生アントニオ・ガデス舞踊団はガデスが死の直前に自作の普及と後進の育成のために創設した財団が運営、かってガデスとパートナーを組んだステラ・アラウソが芸術監督を務める。2007年に続く来日公演は3プログラムが組まれているなか今回日本では12年ぶりの上演となったのが『アンダルシアの嵐』だ。ガデス後期の傑作との誉高く、なるほどその評判に違わぬものだった。16世紀スペインの劇作家、ロペ・デ・ベガの戯曲「フェンテフォべフーナ」に着想を得たものであり、15世紀スペインにおいて実際におこった事件に基づいている。暴君の圧政に耐え切れなくなった農民たちの反乱がテーマ。土着的、民族的、ローカル色の濃い題材であり、振付も当然ながらフラメンコのテクニックがベースになっているけれども、いつの世にも存在する強大な権力への異議申し立てを描き出して普遍性がある。運命に翻弄される若い男女の愛も涙を誘う。後半、一気に畳み掛ける演出が冴えていて緊密、見応えのある舞台に仕上がっていた。