野和田恵里花さんの死からはや2年・・・

先日知人の舞踊関係者の誘いで『洞察ノ放つ衝動〜リバイバル編〜』という公演を観ることができました(6月3日 神楽坂die pratze)。『洞察ノ放つ衝動』というのは“舞台照明を使わずダンスそのものをみせる企画”として2003年から2005年までに7回行われたものです。今回はその最後の回のリバイバルということでした。参加者は川野眞子、白井さち子、JOU、若松智子(音係)、伊藤虹、松本大樹、奥田純子という面々。しかし、ひとりだけ当時のメンバーが欠けています。野和田恵里花さんです。
2年前の5月11日、野和田さんは44歳の若さで逝去されました。ダンスカンパニー、マドモアゼル・シネマの主軸メンバーとして、そしてモダン、コンテンポラリーに留まらないさまざまの舞台に出演。多くのダンサーに愛され、たくさんの観客に強い印象を残した名ダンサーでした。JCDN「踊りに行くぜ!!」には初回から参加、コンドルズの近藤良平とのデュオ『小さな恋のメロディ』を引っさげ日本各地においてコンテンポラリー・ダンスの魅力を広く伝えた功績は偉業といっていいでしょう。自主公演『なないろの人生』等も忘れられません。葬儀には多くの関係者やファンが集ったと伝え聞いています。
私的には1度だけお話ししました。2001年さるモダン系の作家の公演の当日券を求めようと並んでいた際前後になったときです(当時は批評とか書いていおらず、ただダンスが好きで色々観ていただけ)。野和田さんに「(出演者の)誰かのお知り合いですか?」と聞かれたので、そうではなくダンスが好きで観たいから足を運んだというと、驚かれ喜んでくれました。野和田さん曰く「関係者で席が埋まるだけでなく一般のお客さんにダンスのおもしろさを知ってもらいたい」。一観客としてお話ししただけですが、その際の会話はいまの私にとっても貴重なものです。ダンス芸術の魅力が少しでも多くの人に伝わっていってほしい、と思い観劇し、頼まれれば書く原動力のひとつです。
上記の『洞察ノ放つ衝動〜リバイバル編〜』では、出演者は各々野和田さんの不在を受け入れながらも自身の舞踊の世界を突き詰めている真摯さが伝わってきました。フットワークよく活動し、舞踊界の狭いなかの、しかし、いまだ強固として存在するジャンルの壁をいとも軽々と越えて活躍した野和田さん。その死を改めて悼むとともに、遺された関係者や観客は今一度大きな視野からダンスについて考え、行動していきたいものです。そうすれば、天国の野和田さんも喜んでくれるのではないでしょうか。