ラトマンスキーの躍進

アメリカン・バレエ・シアターが年末年始にアレクセイ・ラトマンスキーの新作『くるみ割り人形』を上演する。バレエ・ファンの間では大きな話題になっている。
ABTの『くるみ割り人形』の紹介サイト
http://www.abt.org/nutcracker/index.html
面白そうな演出であるし、バレエ界の新星スター、ダニール・シムキンが主演を務めるのも注目される。次回のABTの来日公演で上演してくれないのだろうか。
バレエ系の振付家といえば、キリアンやノイマイヤー、フォーサイス、エックらの大御所は健在であるが、その下の世代となるとやや小粒になってくる。ドゥアトやマイヨー、ツァネラらが働き盛りといえるし、このところ日本でも抜粋ながら作品紹介されるようになってきたヴィゴンゼッティらが欧州では売れているようだが、まだまだインパクトが薄い感も。そんななかまだ若手といってもいい年齢ながらロシア、欧米の有力カンパニーにおいて次々にクリエーションを行っているラトマンスキーの存在感が増している。
日本で上演されたものでも『明るい小川』『イワンと仔馬』などの愉快なケッサクな物語バレエだけでなくショスタコーヴィッチに振付けた『コンチェルト DSCH』のようなシンフォニック・バレエでも創意をみせる(若書きの『夢の中の日本』や『シンデレラ』には賛否あるが……)。日本で紹介されていない作品の抜粋を映像で観ても、作風は多彩なうえ、世評高いことからも、外れ少なく大抵が水準以上に達しているといえそうだ。
その活躍の源泉は、抜群の音楽感覚にあろう。音楽への鋭い嗅覚と動きの掛け合わせの妙が卓越している。音楽の扱いが抜きんでていて、そこへ研ぎ澄まされた感性と舞踊語彙の創意への意識も相まった創作であるから、どんな傾向の作品を創っても外れが少ないのだろう。若くしてボリショイ・バレエの芸術監督を務め「グリゴローヴィッチ帝国」「古典の殿堂」で鉈を振いレパートリーを大胆に拡大する等リーダーシップも凄い。イージーな言い方だが、いま、もっとも注目されるバレエ人/振付家であろう。

BOLT (Bolshoi): Physical drill and Denis's split with Nastya

Middle Duet (Contemporary Ballet by Alexei Ratmansky)


Latvian National Opera - Dmitri Shostakovich "The Bright Stream"