東京新聞三賞(舞踊芸術賞、日本舞踊奨励賞、中川鋭之助賞)表彰式

東京新聞制定による舞踊賞3賞の表彰式が6月3日都内で行われた。
今年は同社の主催する「全国舞踊コンクール」が東日本大震災の影響を受けて中止に。そのため例年あわせて行われる同コンクールの入賞者や優秀指導者の表彰はなく、式の出席者もやや少なかったが、それでも関係者が集い盛会だった。
長年の実績を加味して贈賞される功労賞的色合いの舞踊芸術賞には、邦舞:仙田容子、洋舞:斎藤友佳理が選ばれた。
平成23年度 受賞者 邦舞 仙田容子さん 洋舞 斎藤友佳理さん
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bu/gei/
仙田は仙田流の家元として活躍し、また日本舞踊協会鹿児島支部長を30余年務める大ベテラン。洋舞の斎藤は言うまでもなく東京バレエ団のプリマ。母親の木村公香に学び、短期のロシア留学を重ねたのち、東京バレエ団に入り、同バレエ団を代表するバレリーナとして活躍してきた。昨年5月、日本のバレエ団として初めて上演したクランコ振付『オネーギン』タチヤーナ役での役に成りきった演技が高く評価された。斎藤は20年前の世界バレエフェスティバルにおいて同作のパ・ド・ドゥを踊るべく準備していたが、著作権上の問題で上演許可が下りず涙をのんだことがあるというのは、よく知られたエピソードだ。その後、出産や大怪我からの度重なる復帰を経てついに念願のタチヤーナに挑んだ舞台は、役に成りきる、役を生き抜くどころか役に憑依したといってもいいくらいすごみあるものだった。受賞挨拶で斎藤は「19年間踊れなかったことが原動力になった」「もし19年前に踊れていても振付をなぞることしかできなかったと思う」と述べた。そして、昨年の舞台を「バレエ人生の頂点」と語った。12月にはモスクワ音楽劇場バレエがピエール・ラコット版『ラ・シルフィード』を上演するが、振付指導をラコットから任される。モスクワ舞踊大学大学院マスター・教師科を主席で卒業するなど指導者としても活躍を期待され、自身「自分の経験を日本のバレエ界に伝えていきたい」と語った。とはいえ昨秋踊った『ジゼル』は絶品であったし、まだまだ技術も筋力も衰えていない。タチヤーナ役の再挑戦はもとより十八番の『ラ・シルフィード』『ジゼル』のタイトルロール等今後も挑んでもらいたい。
若手舞踊家で今後のさらなる活躍が期待できる人に贈られる中川鋭之助賞は福岡雄大(新国立劇場バレエ団)。
平成23年度 福岡雄大さんが受賞
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bu/nakagawa/
大阪の矢上三姉妹に学び、スイスのチューリヒ・バレエを経て新国立に入った。並ならぬテクニシャンであるが『シンデレラ』『ドン・キホーテ』『ラ・バヤデール』などの全幕主役でマナーの良い演技をみせて注目されている。地元の師たちには今回の受賞を「百万光年早い!」と叱咤されたようだが、牧阿佐美やデビッド・ビントレーはじめ関係者への感謝を口にし、さらなる活躍を誓う挨拶に好感を持った。故人で舞踊評論家・劇団四季の副社長も務めた中川鋭之助の名を冠した同賞は、今年で17回目を迎えたけれども、男性の受賞は5人目。過去の受賞者、小嶋直也、佐々木大、山本隆之、齊藤拓は同賞受賞後さらなるビッグ・タイトルを手にしているだけに、福岡は将来を約束されたといってもいいだろう。
なお、一昨年に創設された日本舞踊奨励賞は花柳寿楽一門を長年にわたって支える花柳錦吾に贈られた。



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