芸術監督の重要性 社会性のある運営を——うらわまこと氏の提言

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト「DANCING×DANCING」の名物コラムのひとつが舞踊評論家うらわまこと氏による「幕あいラウンジ」だ。舞踊界の現状を鋭く考察するだけでなく広く社会全般のなかで舞踊界がどうあるべきかを論じ続けるうらわ氏の面目躍如たるものがある。
1/7更新のコラムは「重要な芸術監督の役割—舞踊界が社会性を持つために—」。
http://www.kk-video.co.jp/comments/urawa-makuai/urawa-m89.html
昨年末、世間を騒がせたプロ野球読売巨人軍の内紛劇の話題を振り出しに、舞踊界における組織やその中の個人の役割関係を問う。ことに芸術監督の役割を見つめ直す。プロフェッショナルな団体を目指すならば、しっかりとした組織基盤を固めるとともに、中長期的な戦略を立てた経営、社会へアピールできる活動が求められてくる。
うらわ氏は東日本大震災原発事故に対して“舞踊界は他の音楽や演劇の分野に比べて、社会的な意識、活動が弱かったきらいがあります”と指摘し(氏は震災復興チャリティ「オール二ッポンバレエガラコンサート2011」にも足を運び「ダンスマガジン」の年末回顧で印象に残る舞台に挙げるなどアーティストたちの活動に目配りもしている)、演劇界などで議論が盛んな劇場法の問題についても“劇場法ひとつとっても、舞踊界が広く外部に発言力をまし、あるいは影響力を行使するようになることが望まれます”と提案する。氏の言うように、舞踊界の内外を広く見渡し、積極的な提言を行っていく芸術監督が望まれるところ。少々厳しい指摘も含まれる。が、大学で経営学を弁じ、全国公文協の芸術情報プラザ舞踊アドバイザーを務め、全国の関係者らと意見交換を交わし各地のバレエやダンスを数多く観続けている氏の言葉であるから説得力があろう。
舞踊村という言葉もある。いかに社会との接点を見出していくか——。そのためには、求心的な役割を果たす人材が求められている。“舞踊界でも芸術監督の重要性、評価をしっかり考えることが必要ではないでしょうか”という、うらわ氏の言葉は重い。