平成24年度名古屋市芸術賞発表 芸術奨励賞に倉知可英

名古屋市では、音楽・演劇・舞踊・美術・文芸等の芸術領域の優れた創造活動を顕彰するために、名古屋市芸術賞(名古屋市芸術特賞及び名古屋市芸術奨励賞)を設置している。平成24年度の受賞者が22日、明らかになった。
奨励賞に現代舞踊の倉知可英が選ばれた。
芸どころ名古屋において内外で活躍する舞踊家は少なくないけれども同賞に選ばれる人は多くない。近年では深川秀夫(特賞)、平山素子(奨励賞)といった内外でのキャリア豊富な大物が顕彰されている。倉知も実力者である。
倉知は6歳から大叔母で名古屋の現代舞踊の祖・奥田敏子にモダンダンスを学ぶ。石井みどり折田克子、倉知外子に師事しコンクール等での受賞も経験している。1998年「愛知県新進芸術家海外留学等補助事業」の助成を受けジャン=クロード・ガロッタ率いるグルノーブル国立振付センターで2年間研修。その後、ガロッタのカンパニーに在籍し世界20か国をツアーで回っている。ガロッタといえばフランスのヌーヴェルダンスの代表的旗手として注目され現在も第一線で活躍する世界的振付家である。
2006年に帰国後は名古屋を拠点に国内外で舞踊家振付家として活躍している。ガロッタのカンパニーで同僚だったヤニック・ヒューゴンとKAYAKU PROJECTを結成。また、ジャイロトニック&ジャイロキネシストレーナーとしても活動している(2011年にGYROKINESIS®のトレーナー資格取得)。
東京では2007年に青山劇場・青山円形劇場のプロデューサーであった故・高谷静治の肝いりによって「日韓ダンスコンタクトVol.9」に招聘され『RAOUX 1998』を踊り存在を示した。昨年秋に石井みどり折田克子舞踊研究所「I.O Dance Flame」で披露した『innermost〜深いトコロ〜』には、ただただ圧倒された。精神の均衡と揺らぎを彷徨っているかのような一人の女性の在り様が、狂おしいほど痛切に伝わってくる。現代舞踊の名家に育ち、世界の最前線で踊ったキャリアを持ちながら安住しない。彼女独自の舞踊を追及するストイックかつ意志の強い表現に感銘を受けた。
異分野のアーティストとのコラボレーションにも積極的で、あいちトリエンナーレ2010「祝祭ウィーク公演」では役者・演出・歌手など多彩に活動する児玉たまみと共演し『光の記憶』を発表している。そして、海外経験豊富でありながら、いや、だからこそであろうか「日本人であること」への意識の持ち方にもこだわりがあるようだ。昨春、名古屋市文化振興事業団・(社)現代舞踊協会中部支部が共催した「花より華らしく・・・芸術に生きた女・女・女」では日本初の女優といわれる川上貞奴をテーマに『Ma Sad Yacco〜 凛として咲くが如く〜』を発表。好評を得ている。
『光の記憶』では、日本人としてはじめてミラノ・スカラ座バレエ学校を卒業しミーシャ・ヴァン・ヌック・バレエアンサンブルやチリのサンティアゴ市立歌劇場バレエ団活躍した中田一史を抜擢し、『Ma Sad Yacco〜 凛として咲くが如く〜』では、天野天街率いる少年王者舘の役者であり二見一幸のダンスカンパニーカレイドスコープ等に出演している若手・池田遼を登用した。若き精鋭を見抜く目も持ち併せているようだ。
あいちトリエンナーレ2013「祝祭ウィーク事業」の『光の記憶II』では、児玉をはじめさまざまなアーティストと「グローバルなコラボレーション」を目指すという。注目したい。
Ma Sada Yacco〜凛として咲くが如く〜 ダイジェスト版.avi - YouTube