舞踊評論家・桜井勤氏が死去

音楽・舞踊・演劇・映像の綜合専門紙「週刊オン★ステージ新聞」7/12号(第1970号)によると、舞踊評論家の桜井勤氏が6月14日に死去されたとのこと。享年95歳。6月5日に肺の病気のため老人病院に入院し療養していたが間もなく亡くなられたという。
氏は従軍後、戦後に平凡社林達夫のもと辞書編纂などに携わる。1960年代から本格的に舞踊評論をはじめ「音楽新聞」「現代舞踊」「ダンスマガジン」「BALLET」などに長年にわたって執筆を続けた。バレエ・現代舞踊・児童舞踊・日本舞踊・民族舞踊等ジャンルを問わずオールラウンドに活躍。各地の公演も回られていた。(旧)文部省や文化庁の各委員、各舞踊賞・コンクールの選考委員・審査員を歴任した。いまでは会員数が大幅に減少し洋舞方面に人材も少ないため寒々しい状況を呈している舞踊批評家協会が、かつて権威あった時期の事務局も務められていた。
晩年は体調を崩し劇場に足を運ばれなかった。最後に氏をお見かけしたのはいつだっただろう。2007年末ル・テアトル銀座で行われた小島章司フラメンコ「戦下の詩人たち 《愛と死のはざまで》」の会場でお話ししたのは覚えているが、その後しばらくして公演会場でお姿をおみかけすることはなくなった。とはいえ外出できないもののお元気だと耳にしており「セーヌ」誌に昨秋まで「桜井勤のSTAGE WATCHING」を連載されていた(現在は rememberと題し過去記事ダイジェスト掲載)。
私的に深い交流はなかったが「いつも記事を読んでいるよ」と声をかけていただき大御所・長老ぶらない気さくな方だと感じていた。実際、温厚篤実な人柄によって親しまれ多くの舞踊家たちに信頼され愛された評論家であった。私なども「桜井先生にお世話になった、今もお元気ですか?」と聞かれることが少なからずある。戦後の舞踊界を見守り続けてきた証人のひとりが、またひとり世を去った。謹んで冥福を祈る。