中島哲也監督「告白」に黒田育世が出演!

昨年度の本屋大賞受賞作である湊かなえのベストセラーを原作に、松たか子主演で映画化した「告白」。「下妻物語」「嫌われ松子の一生」といった芸術性と商業性を兼ね備えた秀作を連打する中島哲也監督最新作ということもあって楽しみにしていた。
ひとり娘を亡くした中学校教師(松)が、担任を務めるクラスの生徒に娘を殺されたと語りだす告白にはじまり、教師、生徒やその親たちといった事件の当事者・関係者の相次ぐ告白によって、事件の真相が少しづつ明らかになっていく。殺人、暴力といった陰惨なシーンや学級崩壊、家庭崩壊といった現代社会の病巣が描かれる重い内容である。とはいえ、愛憎の果てに浮かびあがるのは、生命の尊厳。ここでは、中島監督一流の、華も実もあるケレン味たっぷりな映像・演出は影を潜める。変わって、無機的で荒廃感の漂う映像と、役者の表現力と存在感をクリアに引き出す演出が特徴的だ。レディオヘッドの美しい歌声が俗に塗れた愛憎劇に聖性をあたえており心に残った。
冒頭から明らかにされる犯人2人のうちのひとり少年A・修哉の生みの親をコンテンポラリー・ダンサー/振付家黒田育世が演じているのも目を惹いた。ネタバレになるので詳しくは書けないけれども、少年の殺人に至る大きな動機を占めるものに、黒田扮する彼の生みの母親との葛藤がある。登場場面はさほど長くないが、重要な配役をとても印象的に演じていた。これまで黒田が舞台で演じてきたなかのある種の魅力が活かされていて、「なるほどそう来たか!」と唸らされるような登場の仕方だった。
ちなみに、もうひとりの犯人少年B・直樹の母親を演じたのは木村佳乃。その木村が以前、三池崇史監督の異色作「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007年)に出演した際に、同作の振付を手がけたのが黒田である。その際に両者は知り合い、以後公私共に仲がよいらしい(黒田の主宰するBATIKの舞台を映像化した「ペンダントイヴ」公開の際のトークショーで木村と黒田が対談して明かしている)。そのふたりが母親役で共演するというのはめぐり合わせなのか。コンテンポラリー・ダンサーが出演したり、振付でかかわった映画には、トホホな出来のものも少なくない。当代一流の実力派流行監督の快作に出て、偉才ぶりの一端を発揮できた黒田は、なんとも幸運だと思う。


映画「告白」公式サイト


映画「告白」予告編 最新long版 松たか子 岡田将生


告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

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