草刈民代が現役引退へ

マスコミでもおなじみのプリマバレリーナ草刈民代が来年4月に行われる、自身によるプロデュース公演「エスプリ〜ローラン・プティの世界〜」を最後に現役引退すると発表、そのニュースがスポーツ新聞やネットニュースを賑わせた。
小林紀子のもとでバレエをはじめその後は牧阿佐美らに師事し牧阿佐美バレヱ団のトッププリマとして活躍、海外でも踊り、レニングラード国立バレエ公演等にも客演するなどそのキャリアをみると輝かしい。そして何よりも周防正行監督の映画『Shall we dance?』に主演したことで一躍国民的に知られる存在となった。美貌と抜群のスタイルのよさ、そして天性の華が何よりも草刈の特徴であろう。近寄りがたいまでの圧倒的な存在感で観るものを圧した。ことにプティ『若者と死』で演じた死神役は畢生の当たり役といえる。冷ややかで醒めた美しさをもってして若き芸術家を破滅へと追い込んでいく。ファムファタールの極北ともいえる役どころに草刈の個性がはまり、あまりに真に迫った舞台で慄然とさせられた。プロコフスキー振付『三銃士』の悪女ミレディ役もこの人にしか出せない老獪で熟達した演技だった。新国立劇場バレエで踊った、チューダーの名作『リラの園』における婚約者の愛人役も忘れ難い。透明感のある美しさと細やかな視線の演技に余人を持って変えがたい資質を感じさせはした。
報道によると、草刈は今後女優業に意欲を示しているとのこと。バレエあるいはバレエ界とはどのような距離・関係をとっていくのだろうか。抜群の知名度とセルフプロデュース能力を活かして2006年には来春の公演と同様にプティ作品を集めた「ソワレ」と題したプロデュース公演を行ったが、その際には自らスポンサーを見つけ、振付もプティに依頼しパリや中国での公演も実現させた。その行動力は並み大抵のものではない。自身は現役引退し一線を引くが、後進のため、バレエ界のためになることなのであれば、その稀有なプロデュース能力を発揮してもらいたいとは思う。