東京バレエ団第24次海外公演日程決定&ハンブルク・バレエが『月に寄せる七つの俳句』『時節の色』を上演

東京バレエ団が6月から7月にかけて2年ぶり24回目となる海外公演を行う。トルコ、ドイツ、イタリア、フランスの4カ国11都市で15公演を実施するが、7月11日、ミラノ・スカラ座での『ザ・カブキ』の上演をもって海外公演通算700回を達成するようだ。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/24.html
6月22日、23日にはハンブルク州立歌劇場においてモーリス・ベジャール振付『舞楽』『カブキ組曲』公演が行われるが、それに先立ってジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエがノイマイヤーが東京バレエ団のために特別に振付けた『月に寄せる七つの俳句』(1989年初演)『時節の色』(2000年)をレパートリーに入れるのも話題に。
http://www.hamburgballett.de/e/spielplan.htm
ノイマイヤーは、学生時代から日本という国やその文化に深い関心を抱いており、振付デビュー作はその名もズバリ『俳句』であることはよく知られよう。『月に寄せる七つの俳句』は、松尾芭蕉小林一茶の句をモチーフにしたもので、J.S.バッハアルヴォ・ペルトの音楽を用いている。ノイマイヤー作品というと『椿姫』や『シルヴィア』『人魚姫』といった物語バレエやバレエ・マニアにはたまらない大作『ニジンスキー』などの人気がどうしても高くなる。それらに比して『月に寄せる七つの俳句』は、難解で地味な中編という印象をあたえてしまうかもしれないが、文学的な内容を扱いつつダンス的にも思索的にも深いという、ノイマイヤーの資質がよく発揮された作品ではないだろうか。
東京バレエ団「月に寄せる七つの俳句」(ジョン・ノイマイヤー振付)

公式チャンネルより
『時節の色』は日本の四季を主題とした1時間ほどの長さの中編であり、ヴィヴァルディや湯浅譲二らの曲とともに終幕部にシューベルト「冬の旅」の「辻音楽師」が用いられる。これはハンブルク・バレエのための『冬の旅』(2001年初演)に形を変え組み込まれたのは周知のとおり。『冬の旅』の幕切れ、彷徨する少年(服部有吉)とノイマイヤー演じる辻音楽師との哀切なデュオは忘れがたいが、その原型は、高岸直樹演じる〈男〉、斎藤友佳理扮する〈想い出〉、木村和夫演じる〈時〉の三者が絡む『時節の色』終幕の延長にあるのは順を追って観たものの目には明らかであった。9・11から間もない時期に生み出された『冬の旅』は、混迷する世界のなかでの絶望、そしてそのなかにほの見える希望を描き出して深く胸を打った。その希望を示すおおらかな存在が辻音楽師であり、20世紀の終りに創られた『時節の色』の〈想い出〉と照射しあう関係にあろう。
日本をテーマにした2作品、東京バレエ団にとっても、ノイマイヤーにとっても重要な位置を占めるに違いない作品を、ハンブルク・バレエのダンサーがどう踊るのか。興味は尽きないところ。現地のメディア評や日本から観にいく方の報告を楽しみにしたい。