ゼロになるからだ
スタジオジブリの最新作「借りぐらしのアリエッティ」が公開されてヒットしている。ジブリ作品といえば毎回主題歌も話題になる。なかでも個人的に印象深いのが「千と千尋の神隠し」の「いつも何度でも」(作詞:覚和歌子、作曲・編曲:木村弓)。
木村弓 いつも何度でも
この曲を聴いて、多くの人が、もっとも耳について離れないというか気にかかるのが「ゼロになるからだ」という歌詞だろう。
詩人の谷川俊太郎が同曲の作詞を手がけた覚との対話でこう語っている。
「知性というのは頭だけである」と。
だけどやっぱり、からだがないと、
この自分が生きている世界を
感じることができないと思うんです。
「すべてのものに
からだが
関わってるんだ」
すべてを秩序づけて整理して、
切り離して理解して、という
今の時代とぜんぜん逆の方向ですよね、きっと。
たぶん、詩っていうのは
そういうはたらきを持ってるんだね、
散文とは違って。
「ほぼ日刊イトイ新聞」〜だからからだ より引用
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詩とは身体で書くもの。谷川の発言は詩だけに留まらない。人間が生きるうえでの根源的な問題、自分という存在がゼロということを感得することによってはじめて主体的に生を感じて生きていけるということ。三浦雅士が「バレエ入門」の“自分が無意味であることに気がつくこと”という項目でゼロの身体こそがダンスの出発点だと指摘しているのともリンクする。舞踊とは古くて新しい、根源的な芸術ということができる。
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バレエ公演ですばらしいパフォーマンスに接したり、新たな価値観をもたらしてくれるような刺激的なコンテンポラリー・ダンスに触れると、観ているほうも、たしかに現在(いま)を生きているという実感を得られる。だからダンス公演通いが止められない。身体を通してライブで表現されるパフォーミングアーツというものの価値は、今後いや増すだろう。その魅力がどんどん広がっていくように願わずに入られない。(敬称略)