平成24年度(第67回)文化庁芸術祭賞決定!舞踊部門新人賞に瀬島五月

文化庁は21日、平成24年度(第67回)文化庁芸術祭賞を発表した。
http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/media_geijutsusai_121221.pdf
舞踊部門の受賞は以下のとおり。大賞は花柳與(関西参加公演の部)。優秀賞は玉城盛義(関東参加公演の部)、藤間仁章(関東参加公演の部)、山村若峯董(関西参加公演の部)。新人賞は谷淑江(関東参加公演の部)、瀬島五月(関西参加公演の部)。関東参加公演の部の大賞は該当なしとなった。
バレエでは瀬島五月が貞松・浜田バレエ団特別公演『創作リサイタル24』における演技の成果で新人賞を得た。
受賞理由は下記のとおり。

古典バレエの高い技術に裏打ちされた身体能力を活かし、現代作品3演目をそれぞれ表現力豊かに踊った。森優貴振付「Memoryhouse」での、凄みを持って観客の心に直接響く踊りは強い説得力があり、イリ・キリアン振付「6DANCES」ではコミカルな魅力を満喫させた。古典、現代作品ともに、今後の大いなる活躍が期待できる。

瀬島は7歳から貞松・浜田バレエ学園にてバレエをはじめ18歳のとき「全日本バレエコンクール・ジュニアの部 第1位」、翌年には「アジアパシフィック国際バレエコンクール・シニアの部 第1位」を獲得。英国ロイヤル・バレエスクールに留学し卒業公演ではスタントン・ウェルチ振付『A Time To Dance』に主演している。ロイヤル・ニュージーランド・バレエ団入団後は主役・ソリストの経験を重ね、帰国後は古巣の貞松・浜田バレエ団のプリマとして数多くの作品に主演している。
華やかな容姿と堅実なテクニック、優れた音楽性を兼ねそなえ舞台を牽引する。そのうえで、古典/現代作品問わず明確な意思を込めた解釈・表現によって踊り演じることのできる希少な踊り手。『眠れる森の美女』オーロラ、『ドン・キホーテ』キトリなどでみせた、えもいわれぬ華、『白鳥の湖』オデット/オディールでのドラマティックな演技は忘れ難い。現代作品でもオハッド・ナハリンの『DANCE(マイナス16)』のソロ・パートで魅せた融通無碍なダンスをはじめ今回の受賞対象となったキリアンの『6DANCES』、森優貴の『Memoryhouse』それに2011年度の文化庁芸術祭大賞に輝いた『冬の旅』などで振付の肝を体得しつつ自身の感性を通した独自の表現をみせている。
以前は、ひとり才気走る嫌いがあったり、ときに主役としての力みも見られたが、2010年に男児を出産後まもなく復帰した『ジゼル』あたりから舞台運びに一段と風格を増し、表現力も円熟を増してきた。関西中心の活動だったが、その力量が次第に広く知られるようになり、来たる2013年3月には、公益社団法人日本バレエ協会の都民芸術フェスティバル参加公演『白鳥の湖』主演に抜擢された(共演は奥村康祐)。また、新春には、新国立劇場の地域招聘公演として行なわれる貞松・浜田バレエ団東京公演でも主軸を務める。『くるみ割り人形』のお伽の国の女王を踊り、「創作リサイタル」では、ナハリンの『DANCE』、キリアンの『6DANCES』、森優貴の『Memoryhouse』すべてにおいて主要なパートを踊るという超人的な活躍がみられそうだ。
今回の受賞に関して。瀬島の活躍と力量の一端を知る者からすると、率直にいって「今さら新人賞?」という気がしないでもない。が、貞松・浜田バレエ団は例年芸術祭には「創作リサイタル」で参加している。中編の創作が中心になるので、主演者が大きく目立つ全幕公演に比べると受賞対象になりにくいという不運というか難点はあったのかもしれない。関西公演参加の部では、これまでに青木崇、武藤天華、高田万里、奥村康祐、金子扶生ら瀬島と同年代もしくは下の世代が「新人賞」を受けているが、彼らは全幕主演するか創作でも鮮烈に目立つパートを担当している。実力からすれば遅きに失した感あるのは否めないが、やはり大きな賞である。何はともあれ受賞を祝したい。