金魚(鈴木ユキオ)『言葉の先』

芸術文化振興基金助成事業
金魚(鈴木ユキオ)『言葉の先』
振付・演出:鈴木ユキオ
出演:鈴木ユキオ/安次嶺菜緒/やのえつよ/川合啓史
(2008年12月13日夜 アサヒ・アートスクエア)

今夏行われたトヨタコレオグラフィーアワードにおいて大賞にあたる《次代を担う振付家賞》を獲得した鈴木ユキオ。舞踏を出自とし演劇的な手法も取り入れた創作を各種コンペ・ショーケース等で発表してきた鈴木にとってターニングポイントとなったのが2006年の自主公演『犬の静脈に嫉妬せず』だったように思う。若者が過酷な現実のなかでもがき苦しむ姿を身体を通して強烈に叩きつけた。ドキュメンタリー的な演出・振付とも評されるようだが、次の『沈黙とはかりあえるほどに』(2007年・改訂版でトヨタアワード受賞)ではその取組みがより深化をみせる。観るものも安穏として客席に座っては居られないような抜き差しならない切実さを秘めながらじつに完成度の高いステージを作り上げた。新作の『言葉の先』でも密度の濃いパフォーマンスを繰り広げる。空中に揺れる裸電球と絡む鈴木のソロにはじまり安次嶺の強度と凶暴さを増したダンスも配していくつか見せ場を生み出した。アサヒ・アートスクエアのタッパのある空間を活かした照明効果等も印象に残る。ただ、長いホースや鏡の板といったオブジェとダンサーが絡む場などではその必然性が見え難いし空間をもてあまし気味に感じられる部分もあった。終幕を含め全体的に鈴木のソロに依存しているのは否めないようにも思われる。とはいえ真摯に自己の身体と向き合う姿勢には共感を覚えた。来る2月18、19日には京都のアトリエ劇研にて新たにリ・クリエーション/再創造したヴァージョンを披露するという。また違った空間でより深まったパフォーマンスが観られるのではないだろうか。