伊藤キム/あざみ野Dance Creation for YOUTH『...open close open...』

コンテンポラリー・ダンス界の寵児として名を成したダンサー/振付家伊藤キム。2005年に半年間の世界一周の旅を行い、帰国後は新カンパニー「輝く未来」を立ち上げて若手育成に乗り出しています。京都造形芸術大学の准教授も務め後進を指導しており、さらには全国各地でのワークショップ活動にも精力的。なかでも横浜市アートフォーラムあざみ野において中高生中心のワークショップを定期的に開催してきました。そして今回、5月から4ヶ月間にわたり中高生中心の8名のメンバーが伊藤の下ワークショップを重ね最終的には伊藤のディレクションによる新作を発表しました。
“中高生だけのダンスカンパニーを造りたい!”というのは伊藤が3年ほど前に考えたことだと言います。固定観念なく柔軟な感性を持った若者たちの魅力に惹かれたとのこと。ワークショップでは、伊藤がメンバーにさまざまのイメージや動きを投げかけ、それらと格闘しながら次第に作品として固まってきたようです。上は大学2年生、下は中学1年生までというメンバーでしたが、いずれも経験差はあるとはいえダンス・バレエを学んだか、演劇部や劇団の養成所において演劇を学んだ人たち。なかには数年前から伊藤の行うワークショップに通っている子もいたようです。本番の舞台において、日常的な仕草を連ねたようなシーケンスやダンサブルに踊る場においても、みな表現がしっかりしています。坂本龍一アンダーワールドらを使った音楽構成も巧みで若い感性とメンバーの個性を引き出した伊藤の手腕も光りました。いわゆるワークショップの発表会にありがちな、馴れ合いや自己満足とは無縁の質を保っていたのはさすがです。
終演後にアフタートークが行われました。メンバー各々が伊藤との出会いやワークショップの内容について爆笑の逸話も交え楽しく語りましたが、年長メンバーたちが最後に話したコメントが印象的です。伊藤のワークショップ・作品作りに参加してダンス=物を創ることの楽しさ・生きがいを見出したり、自身のキャパシティを広げることができ、板の上に立ちつことで観ること・観られることの違いを深く認識したということ。若いメンバーが自身に潜在する可能性をダンスを通じて肌で感じ、挑戦する心を持つのは、人間が生きていくうえでもかけがえないことに思われます。若い息吹の瑞々しさに新鮮な驚きを感じ、その未来の輝ける姿を想像して、足どり軽く会場を後にしたのでした。
(2009年8月23日 アートフォーラムあざみ野レクチャールーム)
公式blog:あざみ野 Dance Creation for YOUTH
http://dance-creation.seesaa.net/