2011年3月 ダンス

3月は年度末。助成金を受けての公演が相次ぐこともあって、週末は激戦になる。
少ないけれども来日ものがなかなかのラインナップ。
マリア・コング『fling』(3/16 渋谷区文化総合センター大和田文化ホールさくらホール)は、イスラエル・ダンス界のカリスマ巨匠振付家オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団出身メンバーのカンパニーというからフリークには見逃せないものだろう。ミエ・コカンポ『MD 00-10』(3/26-27 東京日仏学院)は、日本とフランスのハーフで、1993年名古屋で開催された「世界バレエ&モダンダンスコンクール」で金賞・ニジンスキー賞を受賞した傑物の公演。久々の来日では3作品のソロ・パートを披露する。
国内公演は目移りするくらいの豪華なメンツが揃う。
人気者では、イデビアン・クルー『アレルギー』(3/9-13 新国立劇場小劇場)。珍しいキノコ舞踊団とともに1990年代からのコンテンポラリー・ダンスシーンを牽引してきた大御所的存在だが、一年半の充電期間を経て活動を再開する。自身舞踊家として驚異的にしなやかなダンスを持ち味とする井手茂太。彼の作風はコミカルでいて少し切なくて誰しもが共感できる。それでいて、振付・動きの面白さもたっぷりで飽かせない。
Baby-Q『私たちは眠らない』(3/4-6 シアタートラム、3/12-13 大阪STUDIO PARTITA)も見落とせないだろう。独特のダークでブッとんだ世界観を展開する振付家舞踊家、東野祥子ならではの世界が楽しみだ。梅田宏明『Holistic Strata』(3/4、5、11、12 森下スタジオ)も興味深い。ダンスの範疇にとどまらずヴィジュアル・アーティストとして映像や照明を巧みに操り斬新な表現を生む梅田のインスタレーション展に伴うショーケース的公演。各日19:30にAプロ(田畑真希、大竹千春、金野泰史)、20:30にBプロ(奥野美和、笠井瑞丈、アレッシオ・シルヴェストリン)を上演する。
静岡での上演になるが、Noism1+Noism2合同公演・劇的舞踊『ホフマン物語(3/19-20 静岡芸術劇場)も未見ならば押さえたいところか。昨夏新潟で上演されたもので、金森穣振付の3幕からなる大作。ダンサーの身体のぶつかり合いから生まれるエネルギーが生み出す豊穣なイマジネーションと、客席をも含めた劇場空間を巻き込むようなダイナミズムに満ちたパフォーマンスであり、まさに“劇的舞踊”としか呼び得ない秀作だ。私は昨年度ベスト5に推した。余裕あれば観に行きたいのだが…。
コンテンポラリー・ダンスの総本山ともいえるJCDN「踊りに行くぜ!!」セカンド(3/4-5 伊丹アイホール、3/11-12 アサヒ・アートスクエア)も行われる。紹介から創造へ――各地でレジデンスを重ねて創りこんできた作品に期待したい。
月末には派手さはないが、わが国の現代ダンス(あえてコンテンポラリー・ダンスともモダンダンスとも言わない)において超重要なカンパニーの公演が続く。
ひとつ目はダンスカンパニーカレイドスコープ「Anniversary 15th」(3/29-30 あうるすぽっと)。二見一幸振付による『魚の背』『Zippy』『ダンツァ・ディ・トランセ』『Schwaz Elian』の四本立て。『魚の背』以外は新作である。二見は、わが国の現代舞踊の先駆者のひとり江口隆哉の高弟である庄司裕に学んだが、1990年代半ばにはパリで研修し、ヌーベル・ダンスやコンテンポラリーのスタイルにも通暁する。多彩な作風をみせるが、なかでも緻密な振付術を駆使しハード・高密度ながら流動感に富んだ超ハイパーな振付はヤバいくらいに超高度なことをやっているし、観ていても実に楽しい。
ふたつ目のアンサンブル・ゾネ 『Still moving 2』(3/26-27 神戸アートヴィレッジセンター、3/28 愛知県芸術劇場小ホール、3/30-31 シアターΧ)も玄人好みだがチェックしたい。関西洋舞界の草分けのひとり法喜聖二の後を継いだ法喜晶子に師事し、ドイツに学んだ岡登志子は、ドイツ表現主義舞踊の影響も受けつつ繊細な振付とストイックな舞台づくりで独特な舞踊宇宙を切り開いてきた。生半可な覚悟で観れば取り残されてしまうくらい異様な緊密感にあふれた舞台だ。近年は、先日、現代舞踊界最高の栄誉たる江口隆哉賞に輝いた中村恩恵と組んでの仕事を続けている。新作でも、カンパニーメンバーほか中村らのゲストも迎えて新生面に挑むだろう。
アングラ系好きには、麿赤兒大駱駝艦『灰の人』(3/17-21 世田谷パブリックシアター)がおすすめだろう。アングラ方面に疎い人でもカルチャーショックを受けるだろうし、ハチャメチャな面白さ・ポップな感覚もあるので、楽しめそう。女だらけの秘密の花園を標榜する高襟(ハイカラ)『悦楽舞踏晩餐会』(3/17-27 DANCE STUDIO UNO)は小スペースにおいてディープでブキミそしてエロティックなパフォーマンスを展開する。獰猛な肉食系のオンナどもが踊り倒す舞台となりそうだが、今回は主宰・深見章代監修による厳選された食事(フルコース)も味わえるという。なんだか危険で近づきたくない、でも目が離せない!ヤバい興奮を味わえそう。伊藤郁女『私を踊る』(3/20-21 セッションハウス)は、アラン・プラテルやアンジュラン・プレルジョカージュらに寵愛される売れっ子ダンサー伊藤のソロとワークショップメンバーによる公演のようだ。
純然たるダンスではないが、マイム・演劇・ダンスといった枠を超えた自在な創作を行い、演劇公演への振付でも高い評価を受け先日、読売演劇大賞の「最優秀スタッフ賞」も受けた小野寺修二『あらかじめ』(TOKYO DANCE TODAY#6)はパフォーミングアーツファン必見といえるくらい自信をもっておすすめできる。2009年作品のリニューアル上演で、今回は近藤良平(コンドルズ主宰)が使用曲を手掛けるのも話題。
BABY-Q・Yoko Higashino solo dance "VACUUM ZONE"

Hiroaki Umeda 梅田宏明新作ダンス公演「Holistic Strata」CM(YCAM委嘱作品)

カンパニーデラシネラ ある女の家 / company derashinera "A wonen's house"