舞台照明家・アイカワマサアキの死から間もなく一年

舞踏やコンテンポラリー・ダンス中心に活動した舞台照明家アイカワマサアキ(相川正明)が急逝したのは昨年の12月29日だった。享年61歳。コンテンポラリー・ダンスにとって2007年に45歳で亡くなった名ダンサー・野和田恵里花に続く痛恨の損失だった。
イカワは慶應義塾大学文学部哲学科卒業後、笠井叡主宰の天使館に踊り手として参加した。後に、笠井叡大野一雄大野慶人、小林嵯峨、室伏鴻、山田せつ子、黒沢美香、指輪ホテル等の舞台に照明家として関わっている。JCDN「踊りにいくぜ!!」のテクニカルデイレクターを務めるなど若手を支援し、ヤミーダンス、カワムラアツノリの初期型、おやつテーブル等の若いアーティストとの仕事も少なくない。
韓国の現代舞踊や現代演劇との仕事にも力を入れ、後進を育てる「スタッフ塾」を展開した。亡くなる前後にも舞台に関わっており文字通り殉職といった感もある。
個人的には劇場等ですれ違えばご挨拶を交わす程度で、親しいお付き合いはなかったけれども、一度さる公演の打ち上げで、氏が関わっていた黒沢美香の舞台等についてお話しする機会に恵まれたことは大切な思い出である。
黒沢とのコラボレーション「薔薇の人」シリーズでは印象的な仕事をみせていたが、最後となった『南国からの書簡』(昨年9月上演)の成果によって今年6月、黒沢と高野尚美が第31回ニムラ舞踊賞に選ばれた。8月に行われた授賞式の挨拶で黒沢はアイカワへの感謝を口にしたと伝え聞く。故人への手向けとなったと信じたい。
イカワの一周忌を迎えるにあたって彼の仲間や後進によりイベントが行われる。
まず、両国・シアターΧで開催される『オッケー!John’s アイカワ祭』(11月18、19日)では、杉田丈作、山田せつ子、黒沢美香、矢野通子、秦宜子、大野泰代、原口佳子、上田美佐子による実行委員会の指揮の下ゆかりのアーティストたちによるパフォーマンスやトークが行われるようだ。
『オッケー!John’s アイカワ祭』
http://www.theaterx.jp/11/111118-111119p.php
また、アイカワの遺志を継いで運営されているスタッフ塾の活動も見逃せない。
12月12〜16日@StudioGOO、29日@pit北/区域でコンテンポラリーダンサー、舞踏家を対象にスタッフとのコミュニケーションを深め作品を作り上げていくことを狙いとした企画を行うようだ。
ダンサーのためのスタッフ塾
http://www.stuffjuku.com/
あらためてアイカワの冥福を祈るとともに残された仲間や後進たちが彼の遺志を引き継ぎ前へと進むことを心より願いたい。
(敬省略)