第6回 日本ダンスフォーラム賞に笠井叡、加賀谷香、白井剛

日本ダンスフォーラム賞というものがある。これは舞踊評論家やプロデューサーらのメンバーによって構成される日本ダンスフォーラム(JaDaFo)が主催するもの。日本におけるコンテンポラリーダンスの年間賞として創設され、“提案力のある批評性(criticism)の提示と、新たな表現価値の創造性(creation)を支援”し”“専門的な信頼性の高い評価基準で、今までにない視軸”を持つものを志向している。
具体的には国内公演の作品および国際協力作品の中から年間活動に優れた成果を挙げた作家(コレオグラファー・演出家)、公演グループ、ダンサーを、日本ダンスフォーラムのメンバーが推薦し、投票、討議等によって「日本ダンスフォーラム大賞」1名(あるいは1グループ)、「日本ダンスフォーラム賞」若干名(グループ)を決定する。昨年度には「日本ダンスフォーラム賞 特別賞」が新設された。
JaDaFoの会員は名だたる文化人や評論家、制作者たちだ。功成り名を遂げている人も多く、若手の人でも日刊紙に寄稿するなど活動実績は十分。社会的にも業界的にも認められている人たちである。それはともかく同賞が信用に足るのはコンテンポラリーダンスをちゃんと観ている人が選考しているから。一定数の会員がいて、その多くが対象と成り得る舞台の多くを観ているということは年間賞を選出する最低条件である。授賞に際し推薦の弁を述べるのが受賞者の活動を細かく追ってきた人というのも好ましい(前年度の授賞に関するリリースによる)。説得力あるし受賞者もうれしいだろう。
今年(第6回)の受賞者が決まった。先日、どこからともなく情報を耳にした。リリースは貰っていないが、一部メディアで既に報道されているため、ご紹介しておく。

日本ダンスフォーラム賞笠井叡
日本ダンスフォーラム賞加賀谷香
日本ダンスフォーラム賞白井剛

大賞と特別賞は無し。
舞踏創生期から活躍するベテランの笠井叡はYRBWダンスプロジェクトVol.6『Utrobne〜虚舟〜うつろぶね』(於:横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール)を振付けた。笠井と子息の笠井端丈それに岡本優、小暮香帆、四戸由香、水越朋という4人の女性を配した大変な力作・快作として話題に(意外に知られていないが、笠井の主催公演でなく「上村なおか+笠井端丈」の主催である)。昨年度を代表する舞台のひとつだと思っていたので、今回顕彰されたのは何よりである。大御所ながら意気盛んな笠井に対し、大賞を授賞しなかったとはいえ功労賞的な意味合いも含む「特別賞」ではなく本賞を授与するのは誠意あるというか現役の作家として遇し敬意を示しているといっていだろう。
加賀谷香は現代舞踊畑と目される。各舞踊コンクールで第1位を総なめした天才ダンサーとして知られ、Dance-SHANを率いて振付も手掛けている。数年前には傑作ソロ『パレードの馬』を発表し、再演時に江口隆哉賞を受けた。昨年は新国立劇場 近松DANCE 弐題で『エゴイズム』(於:新国立劇場小劇場)を発表。近藤良平篠井英介佐藤洋介、柳本雅寛という個性派が出演し話題を集めた。名ダンサー=名振付家とは限らない。しかし、加賀谷は、この数年振付者としても力を付け、現代舞踊界の次代を大きく担う存在となりつつある。目配りの行き届いたフェアな選出に唸らされた。
白井剛伊藤キム+輝く未来のメンバーとして活躍、発条トやAbsTを率いて自作発表も行い、2000年代のコンテンポラリーダンスシーンの一翼を担った。近年は『True/本当のこと』の海外ツアーや『THECO』の国内ツアーを行うほか関西等での活動が多い。昨年は「フェスティバル/トーキョー11」に招聘され『静物画—still life』(於:自由学園明日館)を発表。これは京都芸術センターで行われた「演劇計画2009」で初演した作品を練りあげたもので、東京公演の前には「KYOTO EXPERIMENT 2011」でも上演された。無駄な動きを徹底して切り詰めるストイックな展開。そのなかに静謐で美しくスリリングな時間が流れていることを体感した。白井作品としては2004年の『質量,slide,&.』以来のボルテージの高い仕事であり、それが認められたのは得心がいく。

KYOTO EXPERIMENT 2011 - Akira Kasai

アルディッティ弦楽四重奏団(音楽)×白井 剛(ダンス) コラボレーション公演


ダンス・ドゥーブル (フォト・リーヴル)

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銀河革命

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