2012年の10大(重大)ニュース!

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年も話題豊富な舞踊界でした。例年ならば一年を振り返る回顧記事を掲載しバレエ・ダンス公演を細かく振り返るのですが、今年は思うところあって辞します。
というのも、あるところで1年を振り返るという趣旨の文章を目にしたのですが、その内容があまりにも酷かったからです。
【1/8追記】日刊紙やまともな専門媒体等に載ったもの、キャリア・実績ある筆者によるものではありません。念のため。誤解招いたならばお詫び申し上げます。
まず、「なぜ」「どうして」という説明もほとんどなく実演家の名前をひたすら羅列するのが不自然。しかも、一部意図的に無視したり、当てつけのように貶している。非常に疑問を抱きました。実演家を「上げ下げ」しようという態度が見え隠れする。いや、露骨に見えたのです。権威主義的な尊大さを感じずにはいられません。
また、守備範囲でなく観劇や取材経験も少ないジャンルに関して見識不足の記述がみられ、関係者はもとより一般の観客が読んでも首をかしげるに相違ないお粗末なものでした。アンケート投票や数人でも見識のある人の合議によるものならともかく個人で実演家の仕事を根拠も示さず格付けして上から目線であぐらをかいて論評する傍若無人・尊大な姿勢に大きな疑問を覚えます。アーティストに対し無礼千万なのでは。
私は、そのようなことはしていないので、気にせず年末回顧を書きたかったのですが、どうしても気乗りしなくなりました。万が一にも同じように思われるのは心外なので。従来のような記事を期待されていた方がいらっしゃったならば、お許しください。そして、新年早々お目汚しの話題となってしまい申し訳ありません……。
付記しておきますが「ダンスマガジン」2月号「バレエ年鑑2013」および音楽・舞踊・演劇・映像による綜合専門紙「週刊オン★ステージ新聞」新年特大号の洋舞ベスト5には、印象に残る公演や洋舞のベスト公演を挙げています。ご高覧ください。


DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2013年 02月号 [雑誌]

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2013年 02月号 [雑誌]


ここでは新趣向で行きます。昨年の十大(重大)ニュースを振り返りました(順不同)。独断と偏見ですので異論もあろうかと思いますが、今後のバレエ・ダンスの発展につながる可能性のあるものを優先して選んだということを付けくわえさせていただきます。

菅井円加ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝!
2月上旬、高校2年生(当時)の菅井の受賞の報をマスコミはこぞって大きく取り上げた。バレエ関係者・ファンからするとローザンヌはプロへの登竜門。将来が問われるのに「なでしこジャパン」フィーバーみたく加熱して持ち上げる報道には疑問を覚えた。しかし、これを契機にバレエへの関心が高まり、菅井の好演した「コンテンポラリーダンス」への注目が増したことは得難いものだった。メディアの報道に関しても、日本のバレエの抱える問題点を明らかにするものも現れた。とにもかくにも話題性十分だった。

森下洋子高松宮殿下記念世界文化賞を受賞!
「東洋の真珠」と称えられ64歳になっても第一線でプリマを務める森下の受賞は各種メディアで大きく報じられた。世界的なプリマを擁し規模・団員の技量水準などの面でわが国トップレベルを誇る松山バレエ団であるが、近年は『新・白毛女』の東京公演や中国公演をほぼ独力で敢行するなど厳しいご時世のなか独自の奮闘を繰り広げている。我が国のバレエ人で一般にその名が広く浸透しているといえるのは森下、そして熊川哲也草刈民代である。彼らの仕事・言動には格別の重みがあろう。森下は賞金の全額を被災地支援として寄付し、そのことも大きく取り上げられた。世界に誇る至宝・森下と松山バレエ団の存在感をあらためて示す出来事であった。

義務教育でダンスが必修化に
中学校学習指導要領改訂によって中学校の保健体育において平成24年度から武道及びダンスの学習がはじまった。ヒップホップ等のダンスが教えられているが、現場はまだまだ試行錯誤のようだ。コミニュケーション教育としての深まり等を期待するのは時期尚早か。ダンスシューズや音響機器等のメーカーが恩恵を受け意気軒昂というニュースも報じられた。議論かまびすしいが、なにはともあれ始まった以上、子どもたちの心身を鍛え養うものとして機能することが期待される。
Kバレエ『シンデレラ』12公演完売&「NHKバレエの饗宴2012」が大反響
国内バレエ公演は一部カンパニーをのぞいて一般観客の動員はほとんど望めないというのが実情。そんななか景気のいいニュースも。熊川哲也のKバレエカンパニーは熊川の出演する公演日は毎回ほぼ即日完売であるが、彼が演出・振付に徹した『シンデレラ』12公演がソールドアウトした。快挙と言っていいだろう。親しみやすい物語を豪華な舞台で展開する熊川流舞台創りの妙がフルに発揮された大作だ。また、NHK新国立劇場バレエ団、東京バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、谷桃子バレエ団、Noism1、吉田都の出演によって企画した「NHKバレエの饗宴2012」が大反響を呼びテレビ放映も行われた。日本のバレエの実力と魅力を広くアピールする場として得難かった。
第13回「世界バレエフェスティバル」が豪華スター勢ぞろいで開催!
世界的なプロデューサー佐々木忠次のプロデュースにより(公財)日本舞台芸術振興会が3年に1度開催する「世界バレエフェスティバル」は世界最高の規模と豪華さを誇るバレエ・ガラである。7〜8月の2週間余りににわたって行われた今回のバレエフェスも全幕プロやガラ含め完売が続いた。ロシア系の大スターも多数参加したことにより国際色の豊かさという点では過去最高のラインナップになったのではないだろうか。ルグリ、マラーホフ、ロマンといったおなじみの面々に加えロパートキナ、ヴィシニョーワ、ザハーロワらが風格ある演技をみせた。コジョカル、セミオノワ、ゴメス、フォーゲル、サラファーノフ、ガニオ、シムキン、マクレイらの活躍も目覚ましい。この規模と水準のガラを実現させることは至難である。その場に立ち会えた幸せを噛みしめたい。
「ダンストリエンナーレトーキョー2012」が画期的な成功収める
東京・青山発のコンテンポラリー・ダンスの祭典「ダンストリエンナーレトーキョー」。今回は18日間にわたって開催され10か国21のカンパニー/アーティストが参加した。劇場公演以外にもダンスショウケース、屋外パフォーマンス、ダンスワークショップやシンポジウム、ダンスフィルム上映、ダンス関連書籍によるブックフェアも催された。アジアを中心とした国際的なネットワークの形成という点でも成果が多かった。文化庁はじめ公・民から多くの助成や協賛を得て大規模なフェスティバルを実行し成功を収めたことは、数多くのコンテンポラリー・ダンス関係者やアーティストの長年にわたる努力と、劇場に集う少なくない観客層の存在抜きには考えられない。「コンテンポラリー・ダンスのブームは下火になった」と事実検証なく表層的な判断のみで放言する人もいるが、そんなことはない。今回の大成功は1980年代後半以降のダンス・ブームがブームでなくなり真に根付きつつある証左といえるだろう。

「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2012」等で横浜がダンスのメッカに
夏から秋にかけて横浜市が主導となって行われた「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2012」では、さまざまなジャンルのダンスの公演やイベントが行われた。プロによるバレエ公演や先鋭的なコンテンポラリー・ダンス公演もあればストリートダンスや民族舞踊の公演、市民参加型のイベントも。急造の感が否めなくメインイベントの「横浜ベイサイドバレエ」や神奈川県民ホールでの『オネーギン』上演など東京バレエ団の協力によるところ大だったが、参加公演数は多くコンテンポラリー・ダンス公演中心に秋の週末は「大野一雄フェスティバル2012」とも重なり横浜界隈で見逃せない公演が続いた。毎年2月に横浜赤レンガ倉庫で行われる「横浜ダンスコレクションEX」を中心に横浜市はダンスに力を入れている。ダンス大好き人間からすればありがたい限りだ。ダンスのメッカとして今後も手厚い支援を望みたい。
岩田守弘がウラン・ウデの国立ブリャート歌舞劇場バレエ団芸術監督に就任!
長年にわたりロシア国立ボリショイ・バレエ団で活躍した岩田守弘が昨秋からブリヤート共和国の首都ウラン・ウデにある国立ブリャート歌舞劇場バレエ団芸術監督に就任した。東シベリアの小国のバレエ団ではあるが国立のオペラハウスの芸術監督というポジションを任されたということは快挙といっていい。岩田の熱血指導によってカンパニーの水準も大きく向上するのではないだろうか。堀内元がアメリカのセントルイス・バレエの芸術監督として団を躍進させているし、昨秋からドイツのレーゲンスブルク・バレエの芸術監督に就いた注目の逸材・森優貴も振付家としての力量が高く評価されている。日本人が海外でカンパニーを率いる時代に突入しているのは頼もしい。
こどもの城 青山劇場・青山円形劇場が2015春閉鎖に……
先に触れた「ダンストリエンナーレトーキョー2012」の開幕翌日、耳を疑うようなニュースが報道された。厚生労働省管轄下にある国立総合児童センター「こどもの城」が老朽化等を理由に2015年春に閉館されるという。同施設内の青山劇場・青山円形劇場も閉鎖に。ダンス/バレエに限っても「ダンストリエンナーレトーキョー」のほか「青山バレエフェスティバル」「ローザンヌ・ガラ」など国際的視野を備えた企画を定期的につづけ日本のダンスシーンを引っ張ってきた劇場だ。演劇やミュージカル等も含めたパフォーミングアーツのメッカとして貴重なものがある。存続を切に願うばかりである。
バレエ&ダンス映画が続々と公開!
昨年はバレエやダンスを扱った話題の映画が立て続けに公開されたのも印象的だ。故ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踊団のダンサーたちの踊りを収めたヴィム・ヴェンダース監督の3D映画「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」は興行収入1億円を超えるヒットに。ピナの代表作のひとつ『コンタクトホーフ』を40人の少年少女が踊る姿を捉えた「ピナ・バウシュ 夢の教室」も公開。ピエール・ラコット&ギレーヌ・テスマー夫妻のバレエと人生に迫る「バレエに生きる]〜パリ・オペラ座のふたり〜」も好評だった。スペインの名匠カルロス・サウラがフラメンコ界のトップ・アーティストを迎えて撮った映像美の極み「フラメンコ・フラメンコ」、奇才フィリップ・ドゥクフレが演出したパリのナイトクラブのショーの裏側を描いた「クレイジーホース・イン・パリ」もあった。スターダンサーへの登竜門ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)に挑む少年少女たちの姿を追った感動的かつ深い洞察に満ちたドキュメンタリー「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ」は現在全国公開中。また、全国のワーナーマイカルシネマではシアタスカルチャー「英国ロイヤル・バレエ団」が月1回上映中。5月まで現地からの衛星中継含む最新の舞台映像を迫力の大画面・音響で堪能できる。舞踊への関心が高まってほしい。


Madoka Sugai - 2012 Selections - Contemporary Variations


映画『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』予告編


バレリーナへの道〈38〉世界のプリマ森下洋子

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熊川哲也 Kバレエカンパニー シンデレラ [DVD]

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ピナ・バウシュ 夢の教室 [DVD]

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