白井剛×川口隆夫×藤本隆行『true/本当のこと』

振付・出演:白井剛(AbsT/発条ト)、振付・テクスト・出演:川口隆夫(Dumb Type)、ディレクション・照明:藤本隆行(Dumb Type)による『true/本当のこと』が山口情報芸術センター(YCAM)にて初演された。最新鋭のメディアテクノロジーとダンスがスリリングに拮抗するパフォーマンス。LED照明をはじめ振動子、音、映像、衣裳などの分野で一級のアーティストが集結、長期に渡って劇場に滞在し制作された。
千変万化の照明や音響が白井、川口の身体と衝突する。日常の空間から次第に何か箍の外れた、狂的な空間に移行していく。すべては緻密にシミュレーションされた舞台だというが演者の身体を通し、リアルと虚構が交錯する。制作チームの共通の問題意識として「マトリックス」があったようだ。最新鋭のテクノロジーを駆使しながらも身体の虚実という主題を身体を軸にして伝えることに成功していた。また、白井は近年、多様なコラボレーションやグループワークに挑んでいるが、そのなかでも手ごたえのあるものになったように思われる。
この公演は文化庁の「芸術創造活動重点支援事業」のうち初の試みとなる《舞台芸術共同制作公演》の対象。同事業は複数の芸術団体と複数の劇場が共同制作する公演を支援、それぞれが企画段階から共同制作し各劇場で公演することが条件となる。制作・上演形態としても画期的なものであったと付け加えておきたい。
今後は12月に金沢21世紀美術館横浜赤レンガ倉庫1号館にて上演される。山口版がひとつの完成版であるのは疑いないが、ヴァージョンアップされたものになることを期待したい。
『true/本当のこと』公式ブログ http://www.true.gr.jp/diary/
(2007年9月1日 山口情報芸術センター スタジオB)