「DANCE×MUSIC!〜振付家と音楽家の新たな試みvol.3〜」

■「DANCE×MUSIC!〜振付家と音楽家の新たな試みvol.3〜」
JCDNコンテンポラリーダンス作品創造シリーズ「DANCE×MUSIC!〜振付家と音楽家の新たな試みvol.3〜」を観る。ダンスを振付ける振付家と音楽を作曲する音楽家が出発点を同じくしてコラボレーションする企画。ダンスを創る際、音楽著作権上の問題で使いたい楽曲が使えなかったり(無断使用は当然NG)、上演できても再演が難しかったり、映像ソフト化されなかったりすることが多々ある。オリジナルな音楽とダンスによる協同作業の需要は年々高まっており、この「DANCE×MUSIC!」は、音楽家振付家/ダンサーの出会いを生む貴重で意欲的な企画だといえるだろう。
この日最初に上演されたYummydance(振付・ダンス)×トウヤマタケオ楽団(作曲・演奏[キーボード、クラリネット、ベース、パーカッション])『手のひらからマウンテン』は、まさに企画の狙い通りの快作となったように思う。宇都宮忍、戒田美由紀、合田緑、高橋砂織、得居幸からなるYummyがトウヤマタケオ楽団を山登りに誘うというのがモチーフのようだが、Yummyのキッチュな魅力溢れるダンスとロック、クラシックがときにぶつかりときに融合した異色の音楽が絶妙に絡む。きっちり創りこむ振付のよさと、即興的にも思えるような意想外のシーケンスともつながりがいい。場面場面の展開の予測がし難くスリリング。楽団のメンバーも伴奏者にとどまらず、舞台の中央で歌ったり、ピルエットして舞台に乱入する箇所も。Yummyは集団創作を特徴とするが、今回は、異色の音楽家と苦闘するうち作舞面でスキルも増えたらしく新展開を予感させた。ただ、突然叫んだり、リンゴを噛み砕き散乱させる場などは痛くて観ていてこっぱずかしい。
後半の鈴木ユキオ[金魚](振付・ダンス)×辺見康孝(作曲・演奏[ヴァイオリン])『Love vibration』は、舞踏出身の鈴木と、現代音楽を中心に多様な奏法を駆使して活躍する自称・戦うヴァイオリニストが四つに組むということで期待したが残念ながら予定調和に終始した。辺見が狂気じみたようにメチャクチャに演奏したり、舞台にたくさんの楽譜を散乱させたりと仕掛けがあるのだが、アナクロな発想で驚きはなく、音楽とダンスが拮抗、掛け算となって立ち現れてくるものが少ないのが残念。久々に鈴木のソロをじっくり観られた点ではそれなりに満足したが、室伏鴻ばりに背中から倒れたりするのはいただけない。ただ後半、辺見が淡々と、即物的にバッハの「シャコンヌ」を弾き、鈴木がそれにあわせ踊る場は、なんとも異様な、寒々とした空間を現出させ印象に残った。
(2008年3月13日 京都芸術センター講堂)