踊りに行くぜ!! vol.8 SPECIAL IN TOKYO

全国21都市で41作品が上演された「踊りに行くぜ!!vol.8」から4作品をセレクト。注目株とアジアからの参加者を加えての上演らしい。近年のコンテンポラリー・ダンス界は、感覚的身体のみに依存するもの、奇をてらったものが跋扈し、袋小路に入っていた感も。その反動からか、昨年から「踊りに行くぜ!!」のスペシャル公演では、それなりの身体的訓練を積み、身体と真摯に向き合っている個人・グループが選ばれる傾向にあるのは興味深い。横浜ダンスコレクションRなどでも同じような動きはみられる。総じて「新しいもの探し」が一段落し、評価の仕組みが変わりつつあるのだろうか。が、創り手も観客もモダンVSコンテンポラリー、あるいはポストモダンをめぐる思想やフレーム造りに惑わされることなく新たな時代のダンスを自らの手で生み、育てていくことが大切だろう。
KENTARO!!from東京『東京で会いましょう』はヒップホップ出身者による自作自演。金髪でカジュアルないでたちの好青年による、軽やかで衒いのないダンス。都市に生きる等身大の若者の、ちょっぴり切ない生の実感が浮かびあがる、みたいな感じ。舞踊語彙はそう多くはないが、ヒップホップベースにしつつ手堅い作りとはいえる。現段階では引き出しも多そうでなく前途に少々不安は感じるが、今後の展開に注目したい。
KIKIKIKIKIKI from京都『サカリバ007』(構成・演出・振付:きたまり、出演:花本ゆか、舟木理恵、白石紗知子、きたまり)は、関西で人気を誇り、前回のトヨタコレオグラフィーアワードの最終選考会に出場するなど知名度を上げている。振付のきたまりは、舞踏を学び、千日前青空ダンス倶楽部の舞踏手として活躍後、自身のカンパニーを率いている。本作は、女の子たちの妄想を具現化したような作品で、痛ましくも甘美な世界を描こうとしたのか。が、構成が散漫で冗長。ダンスも児戯めいてイタいのが残念だ。
プロジェクト大山 from 東京『てまえ悶絶〜3000円くらいの自己肯定〜』は、大学ダンス出身者によるグループ(構成・振付・演出 古家優里、共同振付・出演:長内裕美、梶本はるか、三浦舞子、三輪亜希子、古家優里)。フォーメーション等はそれなりに練られており水準はクリアしている。が、大学ダンスにありがちな馴れ合い的な世界観からは抜け出していない。個々のキャラをより明確化すれば多少は面白くはみられるかもしれないが。集団創作にありがちな温さからどう脱皮していくかが問われる。
白舞寺 White Dance Temple from台湾『過火 Crossing Fire』(出演構成・演出・振付:ユー・シャオチン、出演:ツァイ・ジャーチュン、ツァイ・ウェンリン、ユー・シャオチン)では、白の衣装を着た女性三人が台湾の都市風景の映像を背景に、ミニマルで秘儀的なダンスを繰り広げる。ただそれだけで新味はないが、絶え間なく反復されるムーヴメントに身をゆだねることができれば心地よい浮遊感に浸れるだろう。
(2008年3月7日 アサヒ・アートスクエア)