AMM、CI部、SOUKI

AMM『Rose of Jericho』
第8回シアターΧ国際舞台芸術祭に参加したAMM(主宰・北嶋宏子)は山口県・岩国市に拠点を置き活動するパフォーミングアーツ集団。横浜STスポットのラボや横浜ダンスコレクションにも選出されているが久々の関東公演となった。『Rose of Jericho』は、「ヨハネ福音書」等から材を得たようだ。最後の晩餐、ユダの裏切り、キリストの処刑へといった感じで場が展開。このカンパニー特有の猥雑なエネルギーとエンタメ精神はよく感じられた。北嶋はジャズやストリート、バレエ、コンテンポラリーと多彩な舞踊テクニックを惜しげもなく使ってやりたいように創作する。徹底的に遊びつつ観客を楽しませようとする意志が感じられる。ストリートダンス系のコンペやTV番組でも活躍している河本アレクサンダーはじめダンサーたちも濃いキャラをもっていて、北嶋もそれを活かしているようだ。AMM作品の、アングラだけれども突き抜けた明るさは捨てがたい。パロディや笑いがより明確な批評性を持って立ち上がったらさらに面白くなるようには思う。
(2008年8月28日 シアターχ)
CI部『gather』
今年の横浜ダンスコレクションR・横浜ソロ×デュオ<competition>において審査員賞・MASDANZA賞を得た宝栄美希。大橋可也や森下真樹の作品等にも出演しているがパフォーマンスグループCI部(ちぶ)を立ち上げ初公演『gather』を行った。コンタクト・インプロヴィゼーションのテクニックを基本にダンスパフォーマンスの質を高めていくことを目的として開始されたプロジェクトだという。インプロの試演会で面白いものは滅多にお目にかかれないけれども、CI部はただインプロのテクニックに依存せず自由に遊んでいるのがいい。ダンサーの個性がでていて出たとこ勝負みたいな、予測不可能な面白さがある。意想外な動きの連鎖やアクションを楽しむことのできた場もあった。メンバーはおもに大学ダンス出身。大学ダンス出身にはそれまでに培った技量に安住し、また狭い視野でしか活動できないグループも少なくないなか、その枠を越えようとしているのにも好感を持った。ただ、あくまでプロジェクト、試みとしてのパフォーマンスであって実験を重ねつつより自由な発想による創作を期待したい。
(2008年8月30日 コア石響)
SOUKI『LET'S GO HELL!』
マイムを軸としたパフォーミングアーツ集団「水と油」(活動休止中)の小野寺修二が演出・振付を手がけた『空白に落ちた男』は謎解き、サスペンスの面白さと「水と油」ならではの不可思議な迷宮世界が融合した大傑作だったが、ダンスとマイムの領域を越えて活躍するアーティストは少なくない。江ノ上陽一と小野廣己らによるSOUKIも長年マイムをベースにしたエンターテインメントを志向して活動してきたようだ。今回の『LET'S GO HELL!』今度の週末は“三途の川”を渡っちゃおう!「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたはむれ)」より、は落語の名作をモチーフにして翻案、マイム、ダンス、アクション、語りを駆使して演出している。死を明るく捉え、地獄で右往左往する亡者たちの姿を滑稽に描いている。展開は読めるし、一本調子には感じたけれども小劇場演劇的なパフォーマンスの一種としてはありだろう。
(8月31日 青山円形劇場)