東京バレエ団・ベジャール振付『くるみ割り人形』

平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業
東京バレエ団ベジャール振付『くるみ割り人形
演出:振付:モーリス・ベジャール
ビム:高橋竜太 母:吉岡美佳 フェリックス:松下裕次 M...:首藤康之
グラン・パ・ド・ドゥ:小出領子&木村和夫 ほか東京バレエ団
(2008年11月7日 東京文化会館)

ベジャールが逝去してからはや1年近くが経つ。稀代の天才を喪った衝撃はいまなお大きなものがある。東京バレエ団では5月に続く追悼特別公演として『くるみ割り人形』を上演した。ベジャール自身の幼年時代を回顧した作品であり、母への強い思慕がこめられている。初演したのはベジャール・バレエであるが、元は東京バレエ団のために構想されたものだ。ジョン・ノイマイヤー『時節の色』も作者の抱く深い母性愛が露であったことから「東京バレエ団コレオグラファーに母親を思い起こさせる」と言ったのは三浦雅士氏であるが、たしかに振付家がここまで自身のルーツ、創作の源泉を語ったものはないだろう。ベジャール自身であるビム、そして母、メフィストでありまた父でありそしてマリウス・プティパでもあるという異能の存在M...らの織りなす美しく懐かしい物語である。特別団員であり久々にM...を踊った首藤康之はじめ東京バレエ団の団員たちはベジャールの遺した遺産を受け継いで心のこもった演技を披露。ベジャール芸術の魔力に魅了され、その偉大さをあらためてかみ締めた一夕だった。