輝く未来 試演会「’08.12」

輝く未来 試演会「’08.12」
1『富士』
2『鷹』
3『なすび』

出演:伊藤キム井上大輔/三輪亜希子/伊藤歌織/美木マサオ/塩野入一代/新宅一平/平良麻由子/山下彩子
(2008年12月14日 ZAIM別館402号室)

輝く未来2年目最後の試演会。初めて集団創作に挑んだ。『富士』は出演者3人が基本的に絡むことなく各々がストイックに動きを連ねていく。『鷹』は男女のデュオでこちらも交じり合いそうで交じりあわないという“距離”を浮き彫りにして密度の濃い内容。『なすび』は山下・塩野入のデュオ、平良のソロ、伊藤・新宅のデュオで構成される。伊藤と新宅がカツラをつけてコミカルな掛け合いをするパーツは文句なしに面白いがパートごとの間につながりが見えない感もあった。終演後の「アフター突っ込んだトーク」において芸術監督の伊藤が語っていたように、輝く未来とは、若いアーティストにとって失敗を怖れず意欲的に実験を行える場として貴重なものがあると思う。当節のコンテンポラリー・ダンス市場では、新たなダンサーや作家をもてはやすけれどもすぐに成果を求め消費する傾向も。いうまでもなく伊藤はコンテンポラリー・ダンス界においてもっとも成功を収めた時代の寵児であり、経験も豊富な彼が主導し現在のマーケットに対して疑念を抱きノンを突きつけるからこそ説得力がある。輝く未来のメンバーもひとつひとつの動きに嘘がないのが快かった。このカンパニーも2年目、メンバーも入れ替わりはあるが相対的な技量も初年度より高くなっているように感じた。創作にあたっても当初は振付者を最初に決めていたものの今回の集団創作という形への移行もコンセプトやアイデア勝負になりがちな創作を一旦リセットしたいという空気が伊藤やメンバーの間から熟成されて生まれてきたということなのだろう。今後の展開にも期待したい。