Noism08『NINA-物質化する生け贄(ver.black)』

平成20年度文化庁芸術拠点形成事業
Noism08『NINA-物質化する生け贄(ver.black)』
演出・振付:金森穣
バレエミストレス:井関佐和子
出演:宮河愛一郎/高原伸子/山田勇気/藤井泉/中野綾子/青木枝美/櫛田祥光/真下恵/藤澤拓也/永野亮彦(ゲストダンサー)
音楽:トン・タッ・アン
衣裳:金森愛
椅子:須長檀
照明デザイン:金森穣・森島都絵
併演『partita』
振付:金森穣
出演:宮河愛一郎/山田勇気/櫛田祥光/藤澤拓也/永野亮彦(ゲストダンサー)
(2008年12月17日 横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール)

05年に初演されたNoism=金森穣の代表作の再演。初演後海外ツアーを行うために改訂された新バージョンが上演された。初演時真っ白だったリノリウムは黒。上演時間も休憩を含めての2部構成1時間半から約1時間と大幅に刈り込まれている。しかし、物質と身体という主題は変わらず、人形が人間に支配されるが最後にはその関係が逆転する様を描いているのも同様だ。ツアーヴァージョンであり、大掛かりな照明等も使えないため、身体と音楽、シンプルな照明効果を極限にまで活かしている。初演版(ver.whiteと呼んでいるようだ)は導入から展開、結末まで堅固な構成を誇る大作ながら従来の金森作品よりも身体性を重視。スケール感がありかつ金森独自の舞踊宇宙が展開されているのが魅力だった。ver.blackは余白をギリギリまで切り詰め、身体によりフォーカスを当てている。ver.whiteとver.black甲乙つけ難いし好みはわかれるだろうが、私的には金森が独自の舞踊宇宙を確立したver.whiteをもう一度観てみたい。
余談だが、終演後のアフタートーク中、金森は旧作『black ice』(Noism第2弾、2004年)の話題が出ると評判の悪かった作品と自虐的に話していた(過去にも同様の発言をしている)。世評は別にして私見では重要な作品であるように思う。帰国後のプロデュース公演や新国立劇場バレエ団に委嘱された創作はキリアンらの影響が顕著であったし、Noism第1弾『SHIKAKU』(2004年)はコンセプト、演出としての面白さが先行していた。『black ice』は高嶺格の舞台美術とのコラボレーションとして記憶されるが、密度の濃い多彩な振付を堪能できるものであり、金森独自の舞踊語彙の確立へのステップとして『NINA』(初演版)につながる重要な舞台であったのではないだろうか。ちなみにNoismの本公演作品は新潟のみ上演の能楽堂公演や首都圏ではつくばのみ上演の『sence-datum』含めすべて観劇している(ワークショップ公演や小品等は除く)。