都民芸術フェスティバル助成「現代舞踊公演」

2009 都民芸術フェスティバル助成公演
都民芸術フェスティバル助成「現代舞踊公演」
●内田香『Evocation』
●蘭このみ『ボレロ
●武元賀寿子『LIFE SCRAMBLED』

(2009年2月14日 新国立劇場中劇場)

H・アール・カオスでも踊ったことのあるカリスマ・内田、元宝塚でフラメンコと和のテイストを融合させて評価の高い蘭、黒沢美香との共演も行いコンテ、バレエと他ジャンルのダンサーと交流する武元の揃い踏みは清新なラインアップ。モダンの枠を越えて訴求するのではないだろうか。内田作品は故・池野成が遺した打楽器、マリンバトロンボーンによる現代音楽に合わせ、内田と冴子、渕沢寛子が身体の内に秘めた魂の叫びを痛切に踊るもの。燃焼度の高いダンスの応酬によって飽かせなかった。蘭作品は蘭と貞松・浜田バレエ団出身で欧州や南米等のカンパニーでの経験も豊富な俊英・中田一史(作舞も担当)のデュオとコロス的な役割を果たす群舞によるもの。死の国から蘇えった男(中田)と愛し合う女(蘭)をラヴェルの名曲「ボレロ」を用いて描いた。最後、男はふたたび黄泉の国へと消えていく。「オルフェオとエウリディーチェ」の裏返し版のようだ。あらゆる身体部位をしなやかに躍動させて踊る中田のソロは瞠目すべきもので新鮮な驚きに満ちている。蘭と絡んでのリフト等も見応えがあった。武元作品は渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々がテーマとのこと。コンテやバレエでも活躍するダンサーも多数出ており、彼らの個性も活かし縦横無尽、無秩序的に演者が入り乱れる。ただ、それらを通して何を伝えようとしているのかがいまひとつよくわからなかった。