新進アーティストの発見inあいち「アーツ・チャレンジ 2009」舞踊部門公演

平成20年度文化庁芸術拠点形成事業
新進アーティストの発見inあいち
「アーツ・チャレンジ 2009」舞踊部門公演

講師:佐多達枝
●宝栄美希『Mole of Wrist』
講師:山崎広太
●竹之下亮『マトマトイス
講師:平山素子
●服部哲郎『バイパスドルール』
講師:平山素子(選考委員特別推薦枠で指導)
●鈴村由紀『next to the □.』
(2009年2月22日 愛知県芸術劇場小ホール)

公募選出の若手振付家が国内外で活躍する講師のアドバイスを得て創作を発表する企画(2年ぶり2回めの開催)。前回は20分程度の創作が課題であったが今回は30分から40分の時間が与えられた。アドバイスする講師も前回は2人を担当したが、今回はマンツーマンで指導あたる。宝栄‐佐多は東京で、竹之下‐山崎は熊本で、服部・鈴村‐平山は愛知において条件や期間はことなるが密度の濃い時間を過ごしたようだ。
宝栄作品は自作自演。後ろ向きのスロウな歩行からフロアの動きまでを駆使、照明や衣装にもアイデアがあってじつに魅力的なダンスに仕上がっていた。竹之下作品も自作ソロ。ダンス自体は弱いけれども客席から登場する冒頭からして観客を巻き込み、独特の雰囲気、空気感が生まれてはいた。服部作品は自身は振付に徹して男女6人が出演。男女の複雑な関係性をダンスによって浮き彫りにしようとした。鈴村作品は自作自演。他作品より上演時間は短いが、導入・展開の仕方、空間の使い方などオーソドックスでまとまっている。やや無骨ながら個性的なダンスも印象に残った。
若い作家は自分の方向性や個性を見極め、どう展開していくか悩む時期があると思う。壁を越えるにあたり百戦錬磨の講師たちのアドバイスは参考になろう。また、スタッフやダンサーとの協同作業に対する姿勢等についても学ぶことがあったようだ。アフタートークの最後に本企画のアドヴァイザーを務めた唐津絵理(愛知芸術文化センター主任学芸員)が今回の企画を“プロセスの一部“と強調した。ここで培った経験を今後に活かすのが大切。今回生まれた創作も練り上げ再演することで成長する。企画後のフォローは主催者の手を離れるが、アートには人の輪が欠かせない。講師や出演者同士でおのずと輪が生まれていくものだ。実際、初回参加者のあいだでは様々の出会いが次につながっているという。創る場、出会いの場として貴重、継続が望まれる。