ボヴェ太郎『in statu nascendi』

世田谷美術館 トランス / エントランスvol.7
ボヴェ太郎『in statu nascendi』
構成・振付・出演:ボヴェ太郎
音楽:原摩利彦
照明:深瀬元喜
衣裳製作:砂田悠香
(2009年3月7日 世田谷美術館エントランスホール)

“空間の〈ゆらぎ〉を知覚し、変容してゆく「聴く」身体”をコンセプトに創作するボヴェ太郎。関西を拠点にしているため関東でその舞台に接する機会は少ないけれども、若さに似合わぬ、求道者を思わせるような真摯な創作が特徴だ。筆者は2003年「トヨタコレオグラフィーアワード2003」における『不在の痕跡』、2007年12月セルリアンタワー能楽堂公演『余白の辺縁』、2008年10月伊丹アイ・ホールで上演された『Texture Regained - 記憶の肌理 -』を観ている。以前から関西在住のダンス批評家の評価は高かったが2007年7月伊丹アイ・ホール公演『implication』について「Corpus 」3号掲載の門 行人氏(舞踊批評)の評によってその魅力と特徴が余すところなく示されたように思う。今回、ボヴェは世田谷美術館のエントランスホールでソロを発表した。ピアノの生演奏にあわせ音のひとつひとつをじっくり身体になじませつつたゆたうように身体を動かしていく。指先から腕、上半身と滑らかにしてうねるような動きが連綿と生み出される。一見地味な存在ながらそのダンスはある種魔的なまでに観るものを引きこむ。ボヴェは若手ながら舞踊家として既に高みを極めた稀有な存在といえるだろう。