牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業)
2009都民芸術フェスティバル助成公演
牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚〜ラ・フィーユ・マル・ガルデ〜』
総監督:三谷恭三
演出・振付:サー・フレデリック・アシュトン
指揮:デヴィッド・ガルフォース 管弦楽:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
リーズ:伊藤友季子
コーラス:イヴァン・プトロフ(英国ロイヤル・バレエ団)
トーマス:本多実男
シモーヌ:保坂アントン慶
アラン:宮内浩之
(2009年3月8日 ゆうぽうとホール)

18世紀後半初演の原版に基づき英国バレエの巨匠アシュトンがフランスの農村を舞台にユーモアと機知に富んだ恋愛喜劇として仕上げた傑作。1960年の初演以来英国ロイヤル・バレエの十八番であり、近年パリ・オペラ座バレエのレパートリーにも加わった。牧阿佐美バレヱ団では、1991年に日本初演し以後上演を重ねている。ブドウ園主の息子に嫁がせようとする母親に抗する娘とその恋人たちを描く牧歌的な物語だ。主役カップルによるリボンの踊りや、母シモーヌの踊る木靴のタップダンス、冒頭から意表をつく雄鶏たちの踊りなど印象的な場面のつるべ打ちで飽かせない。
4年半ぶりにリーズを踊る伊藤は流麗な踊りと表情豊かな演技に加え役を楽しむ余裕が出ていたように思う。コーラスのプトロフは昨夏のロイヤル・バレエ来日公演『眠れる森の美女』王子役では端整さが際立ったが、ここでは農夫という役柄を心得え人間味溢れる演技が光っていた。トーマスの本多、シモーヌの保坂は踊りこんで役を自家薬籠中のものに。若手ダンサーの起用の多いアラン役は宮内が好演していた。また、リーズの友人たちに先日、日本バレエ協会制定・第25回服部智恵子賞受賞の決まった田中祐子や橋本尚美らベテランが扮し舞台に厚みをもたらしていたのも見逃せない。
牧阿佐美バレヱ団は一昨年の創立50周年記念シリーズを終えた後、古典に力を入れ若手を育成、団の活性化を図っている。今回、その延長上で、細かなステップ、ハイセンスな演技を要求されるアシュトン作品を難なくこなして団の技量水準の高さを証明した。2009年の主催公演は今回が振り出しとなる。7月にロマンティック・バレエの傑作『ジゼル』、10月にクラシック・バレエの代名詞『白鳥の湖』、12月にプティパ/イワノフ&チャイコフスキー珠玉の名作『くるみ割り人形』を上演。再び古典の上演が続く。若い踊り手の一層の躍進が期待されると同時に、ロマンティック・バレエからクラシック・バレエへの流れを体感できる、考えられたラインナップといえるだろう。