ジョン・ノイマイヤー&高岸直樹のインタビュー

民主音楽協会が編集・発行する広報誌「みんおんクォータリー」第14号では、2月〜3月にかけて来日しジョン・ノイマイヤー振付『人魚姫』『椿姫』を上演したハンブルク・バレエについての記事が充実しています。民主音楽協会公式サイトのトップページリンクからでも読めると遅ればせながら気づいたのでご紹介を(PDF 形式)。

「人と音楽」というインタビューコーナーでは、ノイマイヤーが今回の来日公演や弛みない創造活動について語り、最後には現在地球規模で混迷を深める社会において芸術の力とは何か、芸術の使命とは何かを真摯に語っています。引用はしませんが、芸術とは、我々が生きる上で不可欠なものであるということを衒うことなく訴えています。ノイマイヤーの創るバレエは決して分り易いエンターテインメントではありません。深い哲学を内包した芸術性の高いものです。観るもの思考を促し、同時に感情に激しく揺さぶりをかける。巨匠の芸術に、観客に対する誠実さがひしと感じられるインタビューです。

もうひとつ紙数を割いての企画が「現役ダンサーが語る ジョン・ノイマイヤーの魅力」。東京バレエ団プリンシパル高岸直樹がインタビューに答えています。高岸は『月に寄せる七つの俳句』(1989年)、『時節の色』(2000年)というそれぞれ俳句、日本の四季をモチーフとしたノイマイヤー作品の初演キャストです。『月に寄せる七つの俳句』のときは巨匠との初顔合わせ。遠慮もあってリハーサル中はあまり前に出て動かなかったところノイマイヤーは頭を抱えてしまったそうです。11年後『時節の色』に挑んだとき、高岸さんはリハーサル中積極的に動いたそうです。するとノイマイヤーから稽古場の端に呼ばれ、涙を流して感謝されたということ。ノイマイヤーは知的で独自の審美眼を持ち、確固たるヴィジョンを持って振付に当っているイメージを持ちますが(そういう側面もあるでしょうが)、実際にはダンサーの生む動きや個性をみてイメージを膨らませ創作を形にしていくタイプの振付家ということです。振付家とダンサーの関係、創作という営為の玄妙さを示すエピソードですね。タイムリーなことに間もなく東京バレエ団が「創立45周年記念スペシャル・プロ」において『月に寄せる七つの俳句』を18年ぶり!に再演。東京バレエ団公式ブログを読むと、強行軍のスケジュールながらノイマイヤーが来日、仕上げのリハーサルが行われているようです。こちらも楽しみなところ。