ダンスマガジン編「バレエ・ダンサー201」

ダンスマガジン編「バレエ・ダンサー201」(新書館)が刊行されました。

バレエ・ダンサー201 (ハンドブック・シリーズ)

バレエ・ダンサー201 (ハンドブック・シリーズ)

「バレエの“いま”がわかるスター名鑑」との惹句通り、内外の著名バレエダンサーを取り上げて紹介しています。シルヴィ・ギエム、ニーナ・アナニアシヴィリ森下洋子吉田都、ウラジーミル・マラーホフ、マニュエル・ルグリ、熊川哲也といったおなじみの現役ベテランから今をときめくウリヤーナ・ロパートキナ、アリーナ・コジョカル、スヴェトラーナ・ザハーロワ、ディアナ・ヴィシニョーワ、上野水香、そしてポリーナ・セミオノワ、ナターリア・オシポワ、伊藤友季子、小野絢子、菊地研、マチュー・ガニオ、イワン・ワシーリエフといった新進までが取り上げられています。ワスラフ・ニジンスキールドルフ・ヌレエフら物故した伝説の踊り手や近年惜しまれつつ引退したアルティナイ・アスィルムラートワ、アレッサンドラ・フェリといった往年の名ダンサーもフォローしています。
201名の選出やダンサーによって3ページから1ページさらには半ページと扱い方の異なっている点については読者やファンによって不満が出たり、評価の分かれるのは致し方ないかも。とはいえ、有名どころをほぼ余すところなくフォローしており、ビギナーにとって役に立つガイドブックであるのは間違いありません。新旧のダンサーが50音順で並んでいるため、居座りの悪い並びになっている感は無きにしも非ずですが、辞書的に活用されることを狙って作成されていると思われるので、その点も納得できます。
個人的には日本人ダンサーの生年がほぼ漏らすことなく表記されていることに注目しました。紹介記事等の略歴において生年が出ていないことが少なくありません。欧米では有り得ないことでしょう。ダンサーや主催者が隠しているわけではないのに、媒体側で自主規制して表記しないケースもあるのでは?と疑いたくなるくらい。今回はそういったケースが少ないのが画期的。ダンサー紹介とともに彼ら彼女らの出ているDVDが紹介されているのは親切であり、ビギナー中心に「使える」一冊となっています。
執筆者は海野敏、小町直美、桜井多佳子、佐々木涼子、新藤弘子、堤理華、長野由紀、村山久美子、吉田裕、渡辺真弓三浦雅士、浜野文雄の各氏。斯界を代表する、輝かしいキャリアと実力を誇る識者のお歴々です。各氏とも簡にして要を得た紹介を書かれ、紙数を割ける項目では各々卓見のダンサー論を展開しています。ロシアやイギリス、フランス等のダンサーに関してはエキスパートといえる方々が中心となって執筆。カタログに終わらぬ徹底した編集であり、ダンサー論として読み応え十分です。