舞踊批評の重要性

ダンス公演は公演期間が1、2日と短いことが多く、舞台評が出るのは公演後ということがほとんど。ブロードウェイのように、ロングランシステムをとり得るのであれば、プレビューや初日を観劇した記者や評論家の書いた評がすぐさま掲載され、動員はおろか公演の存続に影響を与えるのですが、日本においてまずそんなことはありません。公演中に評が出るのは、一部の商業演劇やミュージカルに対するものくらいでしょう。
そんななか、「讀賣新聞」の文化欄「クラシック 舞踊」(東京本社版)では、舞踊公演の評を公演期間中に掲載するケースが増えています。今年に入ってから勅使川原三郎『ダブル・サイレンス‐沈黙の分身』、Nosim09『ZONE〜陽炎 稲妻 水の月』、大駱駝艦・壺中天『穴』などなど。文化部のバレエ専門記者、祐成秀樹氏の方針のようです。勅使川原の場合、週をまたいで週末に6公演行われたため、休演中の火曜日の夕刊に早速外部評論家寄稿の評が出ていました。大駱駝艦の場合は、小スペースでのやや長めの公演形態だったため、勅使川原同様公演期間中に評を出せたのでしょう。Noismの場合、東京公演に先行する新潟公演の評を載せる形をとったようです。
日刊紙、専門誌には公演評以外にアーティストへのインタビューやプレビュー記事も載ります。フリーマガジンやweb媒体などプレビューの場は増えている印象。いっぽう批評に関しては流行らないというか商業メディアではあまり書く場もありません。ネット時代の現在、観客による公演の感想等が即時にアップされます。それらにも有益なものはありますが、プロの評論家や専門記者が専門的な観点から偏ることなく舞台に向き合って書かれる質のよい批評はより貴重になるでしょう。日刊紙において公演期間中に出ることは、さらに価値がある。今後もそういった試みが増えてほしいと思います。