埼玉全国舞踊コンクール 成人の部を観て

夏恒例の埼玉全国舞踊コンクール(主催:埼玉県舞踊協会)が今年も行われました。最終日はクラシックバレエ決選 1部(成人)、モダンダンス決選 1部(成人)。さいたま市文化センターの大小のホールを用い、ほぼ同時間帯に開催されるため、両部門すべてをフォローすることができないのは残念ですが、バレエ全60曲とモダン80曲中40曲程を観ました。結果は公式ホームページ等で確認いただくとして、所感をいくつか。
応募者数について。今年は応募者数がやや少なかったようです。ことにバレエの1部は予選のエントリー数が77と少ないのは気になりました。プログラム記載の応募状況をみると、特に関西以西からの出場者が少ない。夏シーズンは発表会等もあり、スケジュール上都合つかないケースもあるでしょうし、奨学金の出る新規のコンクールへと応募が傾く傾向もみられるようなので致し方ないのでしょう。なにしろ国内のバレエコンクールの総数は30を越えたと聞きます。埼玉全国舞踊コンクールは今年で42回目、東京新聞の全国舞踊コンクールにつぐ歴史を誇り、埼玉をモデルにして以後多くのコンクールが立ち上がっていったことは間違いなく、その意味ではやや寂しさも。
男性出場者について。近年、男性出場者有利の審査傾向にあるのではという批判が各種コンクールにつきまといます。わが国では成人男性がプロの舞踊家として活動するケースは困難なだけに、若く優れた人材を評価、励ますため男性に対する審査が甘くなるのではという批判。とはいえ現在、各コンクールともそういった兆候は少ないようで今回もそういう印象は持ちませんでした。バレエ成人部門では、応募者が少ないとはいえ半数程度が予選で落とされています。決選出場者は粒揃い。私見ではもっと上位に入ってきてもおかしくないと感じた人もいたくらい。男性有利とは感じませんでした。モダン成人部門はバレエ以上に男性出場者が少ないですが、観ることのできたなかでも彼らは総じて健闘しており、上位入賞者も出ていてそれも当然に思いました。
最後にコンクールの意義について。埼玉全国舞踊コンクールは故・藤井公らが“(埼玉)県内のダンサーたちのレベルを引き上げたくて始めた”(協会HPのインタビュー記事より)そうですが、その後すぐに広く全国から応募者を募りました。ダンサーたちの“自己研鑽の場”として、また振付も審査対象となるそうで(上記インタビューより)指導者の質の向上の場として歴史を刻んでいます。現在無数にコンクールがあり、プロとしての就職口へのパスポートとなるものや踊る場の少ない人たちが踊り場を求めて気軽に参加できるもの等タイプはさまざま。それぞれにそれぞれの意義はあります。が、自己研鑽の場、関係者同士が刺激を受けあうような場としての埼玉独自の気風は健在のようなので、そこを今後もしっかりアピールし、受け継いでいってほしいと思います。