こまばアゴラ劇場で行われるダンス公演について

東京・目黒区の駒場東大前にあるこまばアゴラ劇場は、平田オリザ率いる青年団の本拠地として知られてきました。2003年以降は貸劇場業務を一切行わず、全公演を劇場のプロデュースとしています。各劇団と連携して作品制作を行い、若手演劇人やカンパニーを育てるシステムは画期的。評価の定まらないアーティストやカンパニーであっても実力を認めれば積極的に支援します。劇場に対して文化庁芸術拠点形成事業は受けていますが、民間の運営であるからこそ可能なシステムといえるでしょう。
同劇場では演劇公演がほとんどですが、近年はダンス公演も増えてきました。夏と冬に行われる「サミット」というフェスティバルには、東京以外からのカンパニーもどんどん参加しています。ちくわ(山口)、yummydance(愛媛)などの公演は貴重なものでした。今年はすでにモノクロームサーカス×じゅんじゅんSCIENCE公演が盛況に終り、続いて夏の「サミット」内でもダンス公演が続きます。京都から参加した肉体関係『48』(振付・演出:京極朋彦)、東京の初期型『The Pop』(構成・振付:カワムラアツノリ)は終了。今週末に捩子ぴじんソロ『あの世』が行われます。11月〜12月にかけては黒沢美香&ダンサーズが「ミニマルダンス計画」を上演。来年の3月にはダンス・演劇の枠を越えてアピールしている冨士山アネット(主宰・長谷川寧)の公演もあるようですね。
この劇場を使うメリットはいくつか挙げられます(以下、劇場サイト等を参照)。主催事業であれば劇場費は無料、提携公演でも格安というのは大きな魅力でしょう。稽古場の安価貸し出しもあります。さらには制作支援金も出るようです。劇場施設内で宿泊も可能なため上京が必要な各地の団体にとって大変便利でしょう。そして何よりも貴重なのが新たな観客との出会い。同劇場には劇場支援会員システムというものがあり、年間公演の回数券等を持ったコアな演劇ファンが各公演少なくない人数訪れます。観客層を広げ、演劇ファン等を取り込みたいカンパニーにとって願ってもない場なのでは。
観客側としては小スペースにおいて良質の舞台を安価で楽しめるのは魅力的。年間パスや回数券等を購入して支援するというのもひとつの手です。“観ることは育てること”とは同劇場のコピー。劇場という場においてソフトを活性化させることに観客が参加できるというのはすばらしい。こういったシステムが広がっていけばいいと思います。