「スーパーバレエレッスン/ロイヤル・バレエの精華 吉田都(NHKシリーズ)」

NHK教育テレビで8月28日から毎週金曜午後0:00〜0:25に放送されている「NHKスーパーバレエレッスン/ロイヤル・バレエの精華 吉田都」がバレエ・ファンや関係者の話題を集めています。英国ロイヤル・バレエのゲスト・プリンシパルの都さんが古典やマクミラン、アシュトン作品を指導する姿が収められ、踊り手だけでなく観客としてもバレエの舞台をより深く楽しむために有益でしょう。テキストブックも充実しています。


各講座、都さんが牧阿佐美バレヱ団系列の俊英ダンサーを手取り足取り指導するプロセスを写真と文で再現。各作品の解説や振付家紹介をわが国の舞踊評論界を代表するお歴々が執筆しています。さらに各講座の後には、「バレエ・ア・ラ・カルト」と題して岡本佳津子、大原永子、藤井修治の各氏が専門的見地からヴァリエーションの演技のポイントについて鼎談。また、都さんのインタビューとともに、都さんの恩師ピーター・ライト、ロイヤル・バレエの同僚フェデリコ・ボネッリ、ロバート・テューズリーが都さんを語るインタビューも収録しています。英国ロイヤル・バレエ・スクール留学のパイオニア小林紀子さんの談話も。巻末のバレエ用語集も簡にして要を得ていて分かりやすい(諸角佳津美さん筆)。監修・編集アドヴァイザーを舞踊評論家の林愛子さんが担当されていますが、なかなか目配りの行き届いた、周到な執筆者人選といえるのでは。
以下余談になります。このテレビ・シリーズ、専門教養番組ですし、放映の時間帯も時間帯なので視聴率としてはそう高いものではないでしょう。しかし、都さんの存在が多くの人に知られる契機になれば嬉しいですね。日本のバレエ人で世間一般に突出して名を知られるのは、古くは故・貝谷八百子、故・小牧正英、谷桃子、牧阿佐美といった巨星から戦後生まれの森下洋子草刈民代熊川哲也というビックネームの方たち。あと強いてあげれば、最近の上野水香さんくらいでしょうか。数年前、都さんがKバレエカンパニーに移籍するというニュースがテレビやネットを賑わせましたが、世間の多くの人には「誰?」と思われたのが正直なところでしょう(都さんファンには申し訳ないですが…)。東洋人でありながら英国バレエの粋を体現する都さん。彼女がより広く認知されることは、バレエ芸術がわが国において社会的地位を高めるためにも得難いこと。その意味においても、今回のテレビシリーズは貴重といえるのではないでしょうか。