パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』、酒井幸菜『スピカ』、神戸ビエンナーレ2009・近畿大学「群舞」

舞踊に限らずパフォーミングアーツのチケット代は決して安くありません。幸い、最近では、学生料金やエコノミー席といったものを設けるバレエ・ダンス公演が増えているのはいい兆候。インターネット中心としたチケット販売会社による割引システムや特チケも定着しつつあります。とはいえ、安くていいものを観たい、また評価の定まらないものを気軽にチェックしたい場合、無料公演があれば観客としてはうれしい。そんなわけで、ここ最近観ることのできた入場無料のイベントを振り返ってみました。
パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』
東京文化発信プロジェクト・パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』は、NPO法人芸術家と子どもたち&財団法人武蔵野文化事業団の共催。振付・構成:福留麻里(ダンサー・振付家)、音楽・出演:即興からめーる団(音楽ユニット)がワークショップに参加した小学校3〜6年生の子どもたちと楽しい舞台をつくり上げました。鍵盤ハーモニカなどのほかガラクタやおもちゃのような小道具を楽器として使った即興演奏にあわせ、子どもたちはのびのび・ゆるゆると踊り、観るものを和ませます。体を動かし戯れることの楽しさが無邪気に伝わってきました。アーティストは自身の芸術活動を行う際、社会から有形無形のサポートを受けています。それをこういったワークショップ等によって社会に還元することも大切。その点、福留は有意義な仕事をしました。
(2009年8月21日 吉祥寺シアター)
酒井幸菜『スピカ』
現在、国立新美術館にて開催中の「光 松本陽子/野口里佳」展 関連イベントとしてダンスパフォーマンス『スピカ』が行われました。振付・出演:酒井幸菜、出演:中村未来 。抽象絵画と写真を手がけるアーティストを取り上げ「光」という表現に迫った企画展にインスピレーションを受けて酒井が作品発表するというイベントです。酒井は2006年のJCDN「踊りに行くぜ!!」に選出され注目を浴びた新進。恵まれた容姿としっかりしたテクニックを持ったコンテンポラリーダンサーとして活躍しています。 今年2月に行われた『ダマンガス!!』では、タイのマンガ家 ウィスット・ポンニミットとのコラボーレーションを行い才気煥発ぶりを発揮し、さらなるブレイクを予感させました。今回は国立新美術館のロビーの一角でのパフォーマンス。青・緑・赤の蛍光灯を縦にして並べたオブジェを背後に、中村とソロ、デュオを織り交ぜてダンスを展開します。蛍光灯の照明の変化とも呼応しつつ光と空間とダンスが緻密にせめぎあう濃密な時空間を生んでいました。空間を上手く使うことに関して酒井は、とびきりの才能の持ち主では。コンテンポラリー界の寵児KENTARO!!らの作品で踊る機会も増えていますが、作家タイプの人だと思うので、それらと並行しつつ、より自身のパフォーマンスを深めてほしいと感じました。
(2009年9月18日 国立新美術館)
神戸ビエンナーレ2009・近畿大学「群舞」
神戸ビエンナーレの一環として行われている「人と人とアートと人と〜三宮・元町アートプロジェクト〜」。ミナト神戸の中心街・三宮〜元町にかけて各種イベント・展示が行われていますが、地元を代表する芸術文化団体であり、わが国最高水準の公演を行うバレエカンパニーのひとつ貞松・浜田バレエ団『ジゼル』尼崎公演の拝見に伺った際にタイミングが合い、近畿大学「群舞」というパフォーマンスを観ることができました。中華街で知られる元町商店街西寄りの大通りで行われたダンスと和太鼓のコラボレーション。5、6人のグループごとに色とりどりのシャツを着た30名程のダンサーが力強く踊ります。休日にまったりショッピングを楽しみながら往来を行く人々の前に突如として現れた大学生の群舞集団。ときに激しくときにゆったりと緩急織り交ぜてのダンスを30分にわたって展開しました。日常になかに祝祭空間を生み、街や人々を活性化させる意欲的な取り組み。近畿大学文芸学部教授の碓井節子やDANCE BOX代表の大谷燠らが中心となって行ったそうですが、こういった企画はぜひ続いてほしいと思います。
(2009年9月27日 神戸・元町商店街4丁目〜6丁目)