この秋、フラメンコ舞踊の話題公演が続々と

この秋はフラメンコ舞踊が熱い!
現代屈指といわれるフラメンコの女王で、亡きピナ・バウシュや「リービング・ラスベガス」などで知られる映画監督マイク・フィギスらが熱烈に支持するエバ・ジェルバブエナが3年ぶりに来日し『Santo y Seña(サント・イ・セーニャ)』『Yerbabuena (ジェルバブエナ) 』を上演(10月20-21日 於:Bunkamuraオーチャードホール)するのが話題ですが、日本の創作フラメンコも負けてはいません。わが国は本場スペインに次いでフラメンコ舞踊が盛んといわれます。黎明期の河上鈴子を経て、小松原庸子、小島章司といったパイオニアが芸術舞踊として深め社会的地位を向上させました。そして現在、次世代の俊英がどんどん台頭しています。今秋は芸術祭シーズンということもあって公演が目白押し。そのなかから次代を大きく担うアーティストによる公演を紹介しておきましょう。
まず最初に挙げておきたいのが鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団・desnudo Flamenco live Vol.4『愛と犠牲』(10月28、29日 於:代々木上原ムジカーサ)。この団体はフラメンコの原点たる力強くエネルギーに満ちた踊りを持ち味としています。『ARTE Y SOLERA 歓喜』では文化庁芸術祭大賞を獲得。プロデュース・作詩:阿木耀子音楽監督・作曲:宇崎竜童による『FLAMENCO曽根崎心中』は、大・中劇場において再演を重ね多くの観客を動員してきました。desnudo Flamenco live は、座席数80席の小スペースにおいてフラメンコ熱を体感できる貴重な企画です。先日は日本フラメンコ界の至宝・小島章司を招いて男性舞踊手五人による「小島章司 魂の贈り物」を開催して話題を呼びました。今回の『愛と犠牲』は、2007年に劇場公演されたものをJAZZ界で活躍する近藤和彦のオリジナル音楽をライブ版に再構成したものということ。パッションに溢れた踊りを間近で堪能できるまたとない機会であり楽しみなところです。
10月の公演のなかでも女性アーティストの活動が目につきます。なかでも注目されるのが日本のフラメンコ界のエリート中のエリートによる公演。公演日順に2つご紹介しておきましょう。最初は入交恒子 CONCIERTO FLAMENCO Vol.11『La Luna de Andalucia(アンダルシアの月)』(10月24日 草月ホール)。入交は小島章司に師事したのち、小松原庸子の舞踊団に入り活躍しました。現在の日本のフラメンコ舞踊手のなかでも超一線級に入る、という関係者の声もちらほらと。2006年、2007年には連続して文化庁芸術祭優秀賞を獲得しており、それ以来2年ぶりとなる公演となるだけに大いに注目されます。石井智子フラメンコ公演『EL COMPAS エル・コンパス』(10月29日 新宿文化センター大ホール)も話題の舞台。石井は名門・小松原庸子スペイン舞踊団の第一舞踊手として長年活躍しました。独立後も古巣に客演する実力者にして日本フラメンコ舞踊界の華といえる存在です。2008年には舞踊批評家協会賞新人賞を受賞しました。今回はコンパスの魔術師ディエゴ・カラスコ、スペイン屈指の若手バイレのエル・フンコを招聘する熱の入れようだけに、充実の内容が期待できそう。
新生なったアントニオ・ガデス舞踊団やクリスティーナ・オヨスといった一時代を画した巨星、先に触れたエバ・ジェルバブエナやホアキン・コルテスらスターの来日も楽しみですが、日本のフラメンコ・アーティストの水準も高く、創作力や機動力に優れた意欲溢れる公演が続きます。前記のdesnudo Flamenco live のvol.5(12月8、9日 於:代々木上原ムジカーサ)では、ヨーロッパで注目を集めるダンサー/サーカスアーチストで、奇才シディ・ラルビ・シェルカウイ作品にも出演するAli Thabet(アリ・タベ)を招聘し、フラメンコの枠を越える新たなステージを展開するとか。コンテンポラリー・ダンスのファン/関係者にとっても見逃せない公演となること必至でしょう。多様な刺激的な公演が続いているので、ぜひ多くの人々に日本のフラメンコ舞踊に接してほしいと思います。