「トヨタコレオグラフィーアワード2010」“ネクステージ”(最終審査会)出場者決定

トヨタ自動車株式会社の芸術文化支援活動の一環として行われる「トヨタコレオグラフィーアワード」は、若手振付家の登竜門となるコンペティションとして定着している。2001年創設であり、今年で7回目。229名(組)の応募のなかからファイナリスト選考会(映像・書類選考)にて6名(組)のファイナリストが選ばれた(5月24日発表)。今夏7月19日に開催される“ネクステージ”(最終審査会)では、世田谷パブリックシアターにおいて作品を上演して公開審査を行い、審査委員・ゲスト審査委員の投票による「次代を担う振付家賞」1名、観客の投票による「オーディエンス賞」1名が決定される。

《ファイナリスト[五十音順]・上演作品》

石川勇太「Dust Park」
神村恵「配置と森」
ストウミキコ/外山晴菜「オレノグラフィー」
田畑真希「ドラマチック、の回」
キミホ・ハルバート「White Fields」
古家優里「キャッチ マイビーム」
※上演時間各15〜20分/上演順未定

公式ホームページ
http://www.toyota.co.jp/jp/social_contribution/culture/tca/index.html
世田谷パブリックシアター 公演情報
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/07/post_193.html
ファイナリストの顔ぶれを知ってまず感じたのは、東京/関東で活動する人に集中したということ。これまでのトヨタでは、砂連尾理+寺田みさこ、東野祥子、隅地茉歩という関西勢が大賞にあたる「次代を担う振付家賞」を得ているし、ファイナリストにも少なからず顔を出してきたのだが今回はゼロ。私見では、関西系やその他で注目している人が何人かいないではなく、やや意外だったけれども、応募状況にもよるのだろう。
さて、ファイナリストだが、平田オリザの芝居などに出たのちNoism、珍しいキノコ舞踊団にも参加した変り種の石川、ポストモダン脱構築しようと試みている?(らしい)神村、キリコラージュというユニットで独特の創作スタイルを貫くストウ/外山、ラフな装いのなかに緻密な計算の行き届いた舞台を作る田畑、ステップ、音楽性の掛け合わせのセンスよく、美術や照明との相乗効果で繊細な舞台を生むキミホ、大学ダンス出身でエネルギッシュなパワーに富む古家と6人6様のテイスト。前回までの8人から減った“狭き門”の突破者をみると、コンセプチャル系やミニマル系、演劇的ダンスに傾いた人が選ばれている印象か。でも、バックグラウンドはかなり異なるとはいえ、皆それなりの実績は持っている。「踊らないダンス」「あまりダンシングしないダンス」系のものでも、しっかりと身体を核にした、説得力あるパフォーマンスを行うのではないか。
内部事情には疎いが、毎回、公演報告やWEB上に出ている感想等を見る限りでも、選考制度のあり方や選出・最終審査結果に対してダンス雀のあいだで議論もあるようだ。でも、そういった侃侃諤諤あってこその?トヨタなのかもしれないし、一概に悪くない。議論なくして時代と向き合い共振する芸術など決して生まれないのだから。ただ、外部や一般の観客からすると、トヨタの最終審査会は、関係者の選んだベスト・セレクト・オブ・コンテンポラリー・ダンスと思われがち(初期は総花的なラインアップでコンテンポラリー・ダンスブランディング効果があったのでは)。隔年開催となり2度目だが、内容・審査次第では、コンテンポラリー・ダンスってどうよ?と、アンチ・コンテンポラリー系から不毛論を唱えられかねないかも。シーンの今後が懸かる正念場となりそうだ。