2010年12月

今月は簡略版にて失礼します。
★来日公演〜レニングラード国立バレエ公演開幕
海外バレエでは、毎年恒例のレニングラード国立バレエのツアーが始まる。先ごろ、芸術監督がコンテンポラリー系のナチョ・ドゥアトに変わるという衝撃的なニュースがあったが、今回のツアーの演目等は以前から決まっており、彼の手腕が発揮されるのはまだ先になりそうだ。来日演目はおなじみのものが多いが、12月公演では『ロミオとジュリエット』に期待。ヴィノグラードフ版での上演となる。コンテンポラリー系では、「ロス・タイム〜コンテンポラリー・ダンスとサッカー」 振付:ピエール・リガルというものが行われるが、不勉強なのでイマイチ内容がよくわからない公演。
★『くるみ割り人形』シーズン
今年も師走は各地のバレエ団が『くるみ割り人形』を上演する。首都圏では、牧阿佐美バレヱ団松山バレエ団熊川哲也Kバレエカンパニー東京シティ・バレエ団井上バレエ団小林紀子バレエ・シアターNBAバレエ団バレエシャンブルウエスベラーム・ステージ・クリエイトなどが上演。キャストのフレッシュさではでは牧阿佐美バレヱ団が新鋭を相次いで抜擢していて注目される。志賀育恵&橘るみという看板プリマふたりが金平糖とクララで共演する回が2回ある東京シティ・バレエ団公演は狙い目かも。チケット代もお手頃なので。舞台美術の豪華さに顕著なように夢のあるゴージャスな舞台を楽しみたいのならKバレエといったところか。他の団もそれぞれ趣向凝らしている。各地でも上演が相次ぐが、名古屋の越智インターナショナルバレエ川口節子バレエ団、神戸の貞松・浜田バレエ団公演などが代表的なところ。貞松・浜田では「お菓子の国ヴァージョン」「お伽の国ヴァージョン」の2本を例年上演しており、演出の違いとともに層の厚いダンサーたちの踊りを楽しむことができる。
★『くるみ割り人形』以外のバレエ
今年は作家・三島由紀夫の没後40年にあたる。東京バレエ団『M』は、ベジャールが三島の人生と芸術をテーマにした書き下ろし大作。個人的にはベジャールの傑作のひとつだと思う。狂言回し役のシを務める小林十市は今回久々にバレエの舞台に復帰するが同時に引退公演に……。貴重な舞台となりそう。新国立劇場地域招聘公演として新潟シティ・バレエ『角兵衛獅子』が上演される。これは日本バレエのパイオニアのひとり橘秋子の代表作のひとつ。以前、抜粋を観たが、和ものでありながらバレエの動きとマッチした振付で興味深かった記憶が。大きな会ではないが松崎すみ子の主宰するバレエ団ピッコロ『シンデレラ』が行われ、これは充実のキャスティング。西田佑子&黄凱という、玄人ファンには堪らない実力派の共演が楽しみだ。首都圏外では名古屋の松岡伶子バレエ団『白鳥の湖。キーロフ・バレエの元プリマ・ナターリア・ボリシャコーワの振付によるバージョンで2日間公演、オデット/オディール役は日替わりで同バレエ団の中堅・若手プリマが踊るほか、王子役を碓氷悠太とゲストの奥村康祐が踊るのが注目される。若手男性ノーブル・ダンサーの双璧といえるだろう。
コンテンポラリー・ダンス公演他
コンテンポラリー系では平山素子「ストラヴィンスキー・イブニング」が見逃せない。芸術選奨文部科学大臣賞新人賞、江口隆哉賞を受けた『春の祭典』&新作『兵士の物語』を上演する。重鎮山田せつ子ソロ『薔薇色の服で』も注目される。最近はご無沙汰だったが、この人の身体の使い方には独特なものがあって、10年前くらいに観たときは思わず目を疑うような恐るべき精度の踊りを見せていた。矢内原美邦ダンス公演『桜の園〜いちご新聞から』も見落とせないか。チェーホフの劇作に想を得ての舞台のようだが今春の『あーなったら、こうならない。』に続いて「ダンス公演」と標榜するだけに、どんなものになるのか。モダン畑では加藤みや子ダンススペース・ブラジル凱旋公演『Sand Topos』&『笑う土』『日記』。加藤は大御所の域ながらも若々しい感性とフットワークのいい舞台づくりを持ち味に精力的に今と向き合った創作を続けている。705 MOVING Co.『THE 式典』『IMPROVISATION.705117902.2』は気鋭の菊地尚子率いるカンパニーの公演。菊地はモダンベースにしながらも柔軟さと豊富なスキルを誇る存在で、インプロのソロからかっちり創りこんだ群舞、映像とのコラボレーションなどあらゆる創作において力を発揮している。まだホームラン、決定的な作品はないと思うが打率に関しては低くなく安定した作家とはいえる。舞踏系。和栗由紀夫+好善社新作舞踏公演『肉体の迷宮』土方巽直系の和栗のカンパニー公演としては8年ぶりのもの。大駱駝艦・壷中天公演『壺ひっくり返っちゃった大作戦』は有名舞踏集団のアトリエ公演。今回の振付担当はベテランの村松卓矢なので楽しめそう。他にもいろいろあるが、ある程度の規模の公演で目立つものはこんなところか。