熊川哲也とKバレエカンパニーの東日本大震災をめぐる動き

未曾有の被害をもたらし、いまなお被災地では大変厳しい状況が続いていると報じられる東日本大震災。各界で支援の輪が広がっているが、舞踊界でいち早く行動を起こし支援を明確に表明した団体のひとつが熊川哲也Kバレエカンパニーだろう。
Kバレエは折りしも東京・渋谷にて『真夏の夜の夢』『バレエ ピーター・ラビットと仲間たち』上演期間中に震災発生を迎えた。3月10日(木)の初日を無事終えていたが2日目・震災発生当日11日(金)夜公演は休止に。12日(土)の昼・夜公演も休演となった。13日(日)の昼公演と同日夜に行われた11日(金)分の振替公演はおこなわれたものの14日(月)昼・夜に組まれた12日(土)の昼・夜分の振替公演は休止となった。
予定の5公演すべての前売券完売の人気だったが、震災の影響で見られなかった人は多い。不測の事態のなか条件の許す限り開催を模索しつつ、予定通り行われた13日(日)昼公演を含め11日以降公演前売券を購入し観られなかった人へ次回公演『ロミオとジュリエット』への振替もしくは払戻を行ったのは臨機応変な対応に思う。
当初観る予定の12日(土)昼公演が見られず13日(日)の夜公演をみた。音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「オン・ステージ新聞」に舞台評を寄せたので詳しくはそちらを一読いただきたいが、両作ともプロフェッショナルな隙のない舞台で、観客に供するに相応しい気持ちのこもるものだった。ロビーには今回の事態に対する熊川のメッセージが掲げられ、また、カーテンコールは無しという処置が取られた。
その後、20日(日)、21日(月・祝)に神戸公演が行われ、そこで募金箱を設置し、所属するダンサーによる募金活動を行ったという。集まった救援募金は2日間でなんと1,791,371円となり、日本赤十字社へ送られたと報告されている。また、日本赤十字社を通じて18日付で熊川哲也個人より1,000万円の寄付をした旨発表された。
被災地の方が負われた被害に比べられないが、全国の多くの人々も震災によって少なからぬ影響を受け、心も沈んでいる。バレエに限らず舞台芸術というものは水や食料のように人間が生命を維持するうえで不可欠なものではないかもしれないが、人々の癒すことはできる。とはいえ世の中あっての舞台芸術活動である。現状を鑑みて「アーティストとして何ができるか」を意識的に考え、迅速に行動に移す熊川の姿勢は頼もしく共感したい。熊川はバレエ芸術がより広く社会に認知されるよう活発に発言し動いてきたのは周知のとおりだ。今回もじつに雄弁かつスマートな行動に思う。
神戸公演 義援金募金ご協力のお礼とご報告http://www.k-ballet.co.jp/news/view/397
東日本大震災 義援金募集についてカンパニーメッセージ
http://www.k-ballet.co.jp/news/view/396


KUMAKAWA 1999‐2009 K-BALLET COMPANY (写真集)

KUMAKAWA 1999‐2009 K-BALLET COMPANY (写真集)


熊川哲也―バレエが選んだ男

熊川哲也―バレエが選んだ男