JCDNを中心としたわが国におけるコミュニティダンス確立へ向けた動向

コミュニティダンスというものをごぞんじだろうか?
教育や健康、福祉、地域の活性などにダンスを用いようとするものであり、イギリスにおいて1970年代半ばから活発になってきたものといわれる。ダンスの持つコミュニケーション力を活かした活動だ。いまでは、地域に密着したもの、障がい者のダンスといった狭義のものではなくなり、老若男女誰もが参加できるコミュニティアートの一環として世界各地で広く行われている。わが国には、海外でも作品上演やワークショップを行う振付家・ ダンサー・ダンス講師の南村千里のような先駆者・第一人者もいる。
日本では、芸術ダンスと学校や養護施設で行われるコミュニティダンスが乖離していると指摘される。とはいえ、2012年からは中学校教育の中でダンスが完全必修化されるし、より身近な問題となってくる。また、JCDNの調査では、ほとんどのイギリスのアーティストは、創作活動とコミュニティでの活動を両立させていて、コミュニティでの活動が大きな収入源になっているという。アーツカウンシルなどが舞踊団等の公演活動に助成する場合、助成条件として、公演以外に地域における活動を行うことが義務付けられているようだ。なにもイギリス式にすべきというのではないけれども、わが国の舞踊家の経済保障や公的助成金のあり方を考えるうえで示唆に富むのではないか。
詳しくは下記のサイト等参照。
コミュニティダンスジャパン
JCDNでは、これからの日本のコンテンポラリー・ダンスを発展させていくために、アーティストの創作活動と地域での活動を両立できる方法を模索している。2008〜2009年には、「DANCE LIFE FESTIVAL 2008」が行われ、ワークショップや研究会、シンポジウムなどを通してわが国におけるコミュニティダンスの確立に向けての意見交換や提案がなされた。私もシンポジウム等を聴講し、デモンストレーションも観ることができた。ブリティッシュ・カウンシルや障がい者の芸術文化活動を支援するエイブルアート・ジャパンらと協力し合い、現状打開へ向けて意欲的に活動しているのを実感した。
ところで、JCDNでは、昨秋、「コミュニティダンスのすすめ」と題するパンフレットを作成した。コミュニティダンスの紹介と日本での普及を目的としたものだ。日本におけるコミュニティダンスの事例をアーティスト・主催者・参加者の肉声で伝え、イギリスのコミュニティダンスの紹介も行われている。コミュニティダンスについての研究もされている舞踊評論家・研究者の稲田奈緒美さんによる寄稿文「日本におけるコミュニティ・ダンスの可能性」も掲載されている。郵送費を負担すればJCDNから送ってもらえるという。コミュニティダンスに関心のある方はぜひ一読されることをおすすめする。
「コミュニティダンスのすすめ」パンフレット
http://www.jcdn.org/site0000/project/book-text/cdjp.html


生きるための試行 エイブル・アートの実験

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NPO法人ダンスボックス 循環プロジェクト作品『≒2 -にあいこーるのじじょう-』