鈴木ユキオ(金魚)新作「揮発性身体論」PVおよび昨秋の「プロメテウスの光」映像

音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「週刊 オン★ステージ新聞」新人ベスト1振付家(2011年度)に選ばれた気鋭の振付家舞踊家鈴木ユキオ(ダンスカンパニー金魚 主宰)の新作公演「揮発性身体論」(2月3〜5日 シアタートラム)の予告編がYouTubeにアップされているのでご紹介しておく。鈴木のソロ『EVANESCERE』と安次嶺菜緒ら女性メンバーによる『密かな儀式の目撃者』を上演する。
【予告】鈴木ユキオ新作「揮発性身体論」 Yukio Suzuki "Volatile body"

「揮発性身体論」とはいかなるものなのか?
舞踏出身の鈴木のダンスは強靭で吸引力あるものであるが、エネルギッシュで燃焼度が高いなどと安易に評することはできない。生成と消滅。今そこで生まれ、同時に消えゆく輝きとはかなさ。近作ではそういったものがいよいよ顕著で痛切に胸を揺さぶる。そこに「揮発」というキーワードを読み解くカギがあると私は、にらむが…。
ことに最新作で、昨秋、愛知芸術文化センターの委嘱により初演された『プロメテウスの光』は、寄る辺なき今の時代を生かされているという、我々観るものの実感に強く訴えるものがあった。鈴木は言葉にもこだわり(『言葉の先』『言葉の先へ』という題の作品もある)、『プロメテウスの光』でもゲーテのテキスト(『ファウスト』)が読み上げられ、字幕でも表示された。そこに「揮発」という言葉が出てきた。「揮発性身体論」が、そこに依るものか、それとも違うのかは定かではないが、非常にそそられる言葉である。
『プロメテウスの光』の写真のスライドショーもアップされている。
Yukio Suzuki 【PROMETHEUS' LIGHT】

ギリシャ神話に登場するプロメテウスは人間に火を与えた存在である。先見の明を持った者、熟慮する者の意であり(wikipediaより)、未来への希望を宿した象徴。いっぽうで、プロメテウスの火といえば原子力を意味することもあるのは周知のとおり。
我が国のモダンダンスのパイオニア江口隆哉はその伝説を題材に『プロメテの火』を振付けた。昨年5月には宮操子三回忌メモリアル「江口・宮アーカイヴ」において、その一部が甦った。企画は大震災以前から決まっていたものであるが、その共時性に震撼とさせられた。そして、鈴木の新作も、ことさら強いメッセージを発しないけれども、大震災・原発事故後のいまを生きる人間の実存を深く鋭く問うて、ずっしりとした手ごたえがあった。再演の機会を持ち、愛知以外でも上演してほしいと切に願う。
【関連記事】
週刊「オン★ステージ新聞」2011年新人ベスト1に米沢唯&鈴木ユキオ
http://d.hatena.ne.jp/dance300/20111226/p1