現代舞踊協会制定 第30回江口隆哉賞に能美健志と森山開次が決定!

社団法人現代舞踊協会制定 第30回江口隆哉賞の受賞者が3月14日、現代舞踊協会のホームページにて公表された。
同賞は「わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力された、故江口隆哉元会長の功績を記念し1983年10月13日に制定された。年間を通じ優れた現代舞踊を創作発表した作者に、過去の実績を加味して授与」するもので授賞対象は「広く舞踊界(公益目的事業における顕彰事業)」としている(公式HPより引用)。
今年の受賞者は2名。
江口隆哉賞及び江口隆哉賞に係る文部科学大臣能美健志

授賞理由
White Reflection」「AQUA」と劇場型野心作のあと、昨年はソフトで軽妙なデュオ「リサージュ」を再演、その多才と領域の広さをあらためて証明した。

江口隆哉賞森山開次

授賞理由
曼荼羅の宇宙」の舞台では、従来からの強靭にして個性あふれる身体表現法をいっきょに開花させ、密教にからむ特異なアジア的宇宙の描出に成功した。

能美の受賞作『リサージュ』は公私のパートナー軽部裕美とのデュオ。三原淳子の弾くドビュッシー、サティ、ショパン等のピアノの調べにのせて踊られる。シンプルな空間で展開される誠実で手応えのあるダンスに人生の哀歓を感じた。大人が踊り、大人の鑑賞に耐え得る希少な舞台。順当な受賞といえるのではないか。
しかし、能美のキャリア・作家性から考えると、授賞理由で挙げられている2作——自主公演で発表した『White Reflection』、神奈川県芸術舞踊協会に委嘱された『AQUA』という長編を創り、キャリア最高といっていい充実をみせていた2010年に選ばれるのがベストだったように思う。とはいえ賞というものはタイミングや運に左右されるのものだから致し方ない。満を持しての文句ない受賞であろう。
現代舞踊界を牽引してくれそうな働き盛りの男性受賞者は久しぶりだ。男性受賞者が近年きわめて少なく2002年度に上田遙、2007年度に大ベテランの故・若松美黄が受けたくらい。創作者として指導者として一層の活躍が望まれる。
もういっぽうの受賞者・森山開次は先日発表された芸術選奨文部科学大臣賞新人賞とのダブル受賞となった。受賞作『曼荼羅の宇宙』は新国立劇場制作の公演で大きな話題になった。各種メディアに売れている人気者だが、自身で絵を描くなど独特の感性の持ち主。ソロ公演などで才気煥発である。古典芸能との協同作業にも意欲的。
ただ、作品と踊りに接する限り、非常にナイーブな感受性の持ち主に思う。様々な企画に関わっているが、お題目をあたえられ枠を狭められたりするならば、もったいない。みずからの内から出てくる豊かな想像力を飛躍させた創作を続けていって欲しいと願う。