オペラファンタスティーク『レ・パラダン-遍歴騎士』

オペラファンタスティーク『レ・パラダン』(04年初演)を観てきた。パリ・シャトレ座プロジェクトの最終公演。

ラモー作曲の3幕から成る喜歌劇&バレエだが、演出・振付のモンタルヴォ&エルヴュは元々のバレエシーン以外にも踊りを増やした。オペラというよりもほとんどダンスといっていい舞台。中世ベネチアが舞台だが、歌手、ダンサーは現代風のカジュアルな衣装。振付はバレエもあるけれどもヒップホップやコンテンポラリーの手法が中心だ。ヘッドスピンなんかも出てきてワケもなく楽しい。歌手も少し踊る。バロック・オペラにヒップホップという取り合わせは正直眉唾ものかと恐れていたが想像以上に面白い。それから映像。CG処理が巧みでダンサーの動きとシンクロさせて多層的な空間が生まれていた。演奏はウィリアム・クリスティ指揮、レザール・フロリサン古楽演奏では世界一といわれるアンサンブルだ。歌手も一流なのだろう。ラモーの天上的な響きと、ポップで開放感あふれる演出の調和を楽しんだ。

実験性にとみエンターテインメントとしても楽しめる舞台。しかしかなりの空席で驚いた。オペラファンも有名歌手の出ている舞台や大歌劇場の引越し公演には駆けつけてもこの種の公演には来ないのか。バレエ、コンテンポラリー・ダンスファンに訴求する広告展開をしていたがその層も動かなかったようだ。チケットが高いからだろう。安い席はすぐに完売してしまう。S席はギエム×バレンボイム指揮シカゴ響より高い。ちょっと手が出ない。無論、価格設定は内容や制作内容からして妥当だとは思う。ちなみにこの舞台はDVDが出ている(ナマとは比べるべくもないだろうが…)。

(2006年11月5日 Bunkamuraオーチャードホール)