東京二期会『ダフネ』

東京二期会R・シュトラウス後期の隠れた名作『ダフネ』を日本初演した。ギリシャの神々を題材にした、一幕の牧歌的悲劇である。指揮はシュトラウスを振らせれば右に出るものはいないと評される若杉弘。演出・振付はH・アール・カオス主宰の大島早紀子が手掛けた。ダンスは不世出の天才・白河直子はじめカオスの面々。

欧米では、コリオグラファーがオペラ演出を手掛けるのは珍しくない。トリシャ・ブラウンしかり、ケースマイケルしかり。日本人でも天児牛大勅使川原三郎らが手掛けている。オペラ演出を手掛ければ振付家スゴロク(があれば)のアガリといえるのかな。とはいえ、オペラは第一に演奏・歌ありき。演出家はさまざまな制約のなかでいかに独自の色をだすのか難しいところだ。カオスお得意のワイヤーを駆使したスペクタクルは圧倒的であり、シュトラウスの甘美な音楽に拮抗しえていたと思う。流麗で力強い舞台。歌手にも大分動きをつけていたが、歌を聴かせる場はちゃんと心得ている。

歌唱・演奏とダンス、それぞれ魅力的であるがゆえ共振する場面では、何を聴き、何を観たらいいのか困惑してしまったのも事実。オペラは年に数えるほどしか観ないためすんなりとその世界に入り込めなかったという個人的事情もある。ダンスにしろ演劇にしろそのジャンルをある程度見慣れていないと舞台が発する気を受け止められないという一面はあると思う。さて、カーテンコールにおけるオペラ・ファンの反応はいかに?と興味深く眺めていたけれども総じて温かかった。各紙誌のレビューは音楽評論家が書くに違いないからその評価にも注目したい。一部ジャーナリストをのぞきダンス関係者の姿をほとんど見かけなかった。意外や意外。

(2007年2月10日 東京文化会館)