P’Lush『Headanche アタマガイタイ』

P’Lushは、深谷正子門下の玉内集子らのユニット(衣装の田口敏子も第一回から参加)。96年に結成、メンバーを入れ替えつつショーケース公演中心に活動行い今回が初の自主公演だという(出演:玉内集子、鵜野久子、藤本理子、玉内類子)。深谷は、日本現代舞踊のパイオニアのひとり小森敏の流れを汲む藤井公・利子門下。現代舞踊系に位置づけられようがその枠にとらわれない活動をしている。主宰する「ダンスの犬」ではパフォーマンスに傾いたステージを展開している。玉内は二世ダンサーであり、笠井叡の振付作品に出たり、JCDN「踊りに行くぜ!!」などに出るほか活動の幅は広い。

今回の作品は、深谷の振付・演出。4人で踊る場が多く、時折ソロなども挟まれる。最初は、独特のアンニュイな空気感に惹かれた。あまり動かないシーンもあるが、腕立て伏せをするような動きや飛んだり跳ねたりといった、日常的(とされる)動きも取り入れた場が続く。とはいえ、昨今、一部で流行の、ろくに身体訓練も受けていない人間が児戯の如く暴れるだけの舞台とは違う。身体から粗雑なものを削ぎ落とし集中力をもってコントロールすることに重きを置いているのは疑いない。

最大の関心は、玉内のソロ。昨秋「踊りに行くぜ!!」のソロは、往時の山田せつ子を思わせる力線の出方に惹かれた。今回は自作自演ではないのでそれはあまり感じられない。パワフルでよく身体が動く、いいダンサーなのは間違いないが。

終盤、ミスチルの「フェイク」にあわせた群舞は若さと躍動感に溢れている。ただ、出だしのユニゾンがあまりに普通のダンス、他のシーケンスとのバランスを考えると違和感を持ちはした。今後は、動きの良質さに加え、作品としての魅せ方を深め、ユニットとしての個性を打ち出していけばさらに面白くなるだろう。

会場では、舞踏評論の大御所、現代舞踊評論の重鎮らの姿を目にした。なるほど、小さな会ではあるが、現代舞踊、コンテンポラリー、舞踏に関心のあるものとしては抑えておきたいものではある。観客・批評家はダンサーや公演を安易にジャンルわけしてしまう傾向があるが、アーティスト間ではそれほど意識していない面もあるようだ。このユニットの、枠に囚われない活動姿勢には好感が持てる。常日頃、「ダンスは何でもあり」とうそぶきつつ、カテゴリー/ジャンルに縛られているのは、ダンス雀ではないだろうか、そう反省させられる一夕であった。

(2007年4月23日 神楽坂die pratze)